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同じ目的地を目指しているのに、私と彼女では想いが違う。
人生も同じ。
みんな最後には死ぬのに、どうして苦しむ人は苦しみ幸せな人はどこまでも幸せな人生を歩むのだろう。
肩を寄せ合うカップルから少し離れた場所で、私は私だけの想いを抱えながら空よりも濃く輝きを放つ青色を見つめる。
海が見えることで有名なこの駅は、全面ガラス張りの駅舎から太平洋が一望できる。
たまたま昨日、スマホをいじっていたらネットのトレンドに入っていてそれを見た瞬間に最後の旅をこの場所に決めた。
それは、本当にただの思いつき。
「綺麗だねー」
本当にね。と、彼女に心の中で頷く。
私にはこの景色を共有できる相手はいない。
遠くの地平線を見ていると海と自分の境界線がわからなくなるのと同じ。近づけばその境は大きな隔たりがあるという真実に気づく。
人間関係も遠くからだと他者との境界線はわからない。だけど近づくにつれて他者との差に気づく。
普通か。
普通からあぶれるか。
後者の私は社会からもあぶれて人間関係からもあぶれて、一人になることを選んだ。
そして最期には、病によって死ぬのだから普通の人から同情の一つは買えるだろう。
景色と自分達の世界に酔いしれているカップルを横目に、私は展望台を後にすると日立駅からタクシーに乗った。
適当に海沿いまで走らせてもらうと、カラフルな幟が見えてくる。
タクシーを降りる時に、運転手さんに聞いたオススメの食堂に行ってみたら運悪く閉まっていた。
しょうがなく隣の寂れた食堂に入りながら自分の運命と重ねる。
こうして自分が望んだ道は、いつも私を受け入れてはくれない。
結局は妥協して進める道を選ぶしかなくて、だけど妥協は私を幸せにはしてくれない。
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