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人見知りな私と違って、おばあちゃんは人間関係も活発だった。おばあちゃんの部屋に遊びに行けば、しょっちゅう知らないおばさんとかおじさんとかが居てお話をしていて。
「あら、ミカちゃん大きくなったわね」
なんてワケ知り顔で話しかけてきていた。私は精一杯頭の中で思い出したけど、記憶にはないおばちゃん。気づけば私はとりあえずの作り笑顔だけは、うまい子供になっていた。
「ロールケーキのおばちゃんだよ」
おばあちゃんはニコニコしながら、お客さんの特徴を私に伝える。だから、よく分からないなりに私はわかったふりをしていた。
「めんこいねぇ」
「賢いし、いい子なのよ」
ニコニコすれば褒められたし、笑顔で挨拶をすればお小遣いをもらえた。それにおばあちゃんが誇らしそうにするから。
足の悪いおばあちゃんはいつも足を引きずって歩く。だから、おばあちゃんが歩く時はスタスタとかじゃなくてぺったりぺったり、という音がした。
私が悲しくて泣いてる時は、膝の上に座らせてくれた。包み込んでくれるおばあちゃんの肌は、しっとりしてて暖かかった。頭を撫でてくれる手はシワシワなのに。
なんだか雨のようだなと、私は思っていた。凍えるような冷たい冬の雨じゃなくて、じわじわ体にまとわりつくようなあったかい夏の雨。
いつだったか、それを言ってみたことがある。おばあちゃんは少し目を見開いてから、またニコニコ。
「みかちゃんはきっと、小説家とかになれるんじゃないかい」
「おばあちゃんが読んでるみたいな?」
「うん」
ワクワクしたし、おばあちゃんに言ったことはなかったけど、小説を書いてみたこともあった。だから、その一言がすごく嬉しくて嬉しくて、涙が出そうだった。
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