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「ごめんなさい」
小さい頃からの愛情も、たくさんの優しさも、おばあちゃんから貰ったのに私は、何も返せなかった。投げやりに顔だけ合わせて、じゃあってすぐに家を出て。おばあちゃんの悲しそうな顔、気づいてたのに。
それなのに、弱った時はおばあちゃんの声が聞きたくなるんだね。
梅雨入りした街は、じっとり私の体を薄い膜で包み込むようで。やっぱりその感覚は、おばあちゃんに似ていてまた泣けてきた。
いつか、また会えたら、「ごめんなさい」って言えるかな。多分、言う前におばあちゃんは「よくきたねぇ」ってニコニコしながら私の好きなジュースとか、お菓子とかいっぱい出すんだろうな。
でもさ、まだ実感がわかなくてさ。だって、幽霊がいるならおばあちゃん絶対私のところに来ると思ったし。私霊感ないけど。
一ヶ月経っても、二ヶ月経っても何も起こんない。
だから、まだ実感が湧かなくて。家に帰ったら「おかえり」が聞こえる気がする。
悲しい時に抱きしめてくれたシワシワの手も。ペタペタ言う足音も、口うるさい私を心配した言葉も、もう聞けない。
突然、その日は来るって。夢に見れば泣いていた。なのに、どうしてもっと大切にできなかったんだろう。
どうしてもっと、帰って話を聞けなかったんだろう。
後悔が涙になって溢れ出てくる。泣いても、何も変わらないのに。
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