おばあちゃんの足音

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▽  梅雨明けは突然だった。今年の梅雨はやけに短く、あっという間に空は晴天。窓から差し込む眩い光に目を細めてしまう。蒸し暑さのせいで、体内からじわじわと汗が噴き出た。  窓を閉めてエアコンを掛ける。幾分かマシになった部屋の中で、汗が冷えていく。  おばあちゃんの小説を書こう。褒めてくれたおばあちゃんなら、きっと読んでくれるから。  急に思い立ってペンを握れば、謝罪の言葉だけで一枚目の紙が埋まってしまった。こんな謝罪だらけの文章をおばあちゃんは、喜ばない気がしてビリビリに破り捨てる。  一気に飲み干した麦茶から、懐かしい匂いがしてつい笑ってしまった。おばあちゃんの作る麦茶と同じ味がする。  多分、ただ同じ銘柄のお茶なだけなんだろうけど。  気づけばするすると紙は埋まっていった。話したかったこと、聞きたかったこと、一緒に行きたかったこと。今までおばあちゃんに助けられてたこと。  おばあちゃんとの思い出も一緒に。  次に会える時は、また優しくシワシワの手で頭を撫でてくれるかな。
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