あの子と空と

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 私に傘を差し出そうとしてくれたその子は、私は雨が好きだから大丈夫だと言っても不安そうだった。濡れても平気なのかと、寒くないのかと心配してくれた。その子はここを通る度に、私に話しかけてくれる。私はそのひと時が楽しみだった。  時々、空は泣く。その涙は私を生かしてくれる。雨が好きだとあの子に言っておきながら、私は空には泣いてほしくない。でも、空が泣かねば私は生きられない。私は咲くという生き方が好きだ。だから雨が必要で、空には泣いてもらわないといけない。私は我儘を言っているのだろうか。 しとしと。 しとしと。      私は空を見上げた。空が泣く理由が分かった時、私は自らが咲く意味を知るのだろうか。やがて枯れていく意味も、知るのだろうか。  そんな日が来るはずもないのに、今日も私は咲いて、空とあの子を想う。
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