不可解な殺人鬼

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 昔は島流し。今の刑務所は月にある。  ひとりの模範囚、青山(じゅん)が刑期を終えず地球に送り返されるところだった。二十歳で収監されてから二十年。本来、無期刑であったが、改悛の状が十分にあると判断されたための仮釈放だった。つまり更生意欲が十分にあり、再犯のおそれがないということだ。だが、十分に反省しているというのとは少し事情が違った。  刑務官の佐々木(あきら)が地球行きの宇宙船まで同行していた。自動運転の空飛ぶ自動車の中、二人は並んで座っていた。 「ここにずっと置いてくれませんか? なんか地球に帰るの嫌な予感がするんで」 「お前みたいな真面目な人間がいるところじゃない。そもそもお前が犯罪を犯したなんて信じられない。お前は無実を訴えていたよな」  ちょっと横柄な喋り方だが、佐々木は、なめられないようにと意識してそんな話し方をしていた。 「訴えていたわけではありません。本当にやった記憶がないんです。でも、証拠があるようですのでやったのかもしれません」 「まあ、いずれにせよ、こんな所にはもう来るなよ」 「はい。そうあってほしいです」    青山は、佐々木に向かって苦笑いをした。佐々木も苦笑いで応えた。年齢が一つ下だというのに立場が逆だと。
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