不可解な殺人鬼

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 宇宙空港に着き、佐々木と青山はタラップを上がり船内に入った。宇宙船としては小型で入り口は機体の前方にあった。  船内に入ると三十席程度の椅子が両サイドに並んでいて真ん中が通路になっていた。どんどん奥に進み、突き当たりのドアを開けるとまた、同じような部屋がある。客室は何部屋かに分かれていた。次のドアを開けるとまた、同じ部屋。  入るとオペレーターがその部屋の入り口まで来ていた。 「刑務官佐々木章、青山淳を引き渡します」 「オペレーター佐田颯太、青山淳を確かに受けとりました」  佐々木はお辞儀をする青山の「ありがとうございました」という声に笑顔で応えた。  そして、先ほど来た通路を戻ろうとドアを開けると後ろでさっきのオペレーターの声が聞こえる。 「じゃあ、緊箍児(きんこじ)の一部の機能を停止するから、一番後ろの椅子に座ってください」  俺はニタリと笑った。  月の刑務所は、凶悪犯専用だ。 釈放された後、逆恨みした受刑者が刑務官に危害を与えないように、刑務官の顔が別人の顔に見え、声も別人の声に聞こえる。  頭に埋め込まれたチップの効果だ。孫悟空の頭の輪にちなんで緊箍児(きんこじ)と呼ばれている。
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