不可解な殺人鬼

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 声をかけ荷物を持ってあげて、席まで誘導している。この青山というやつはどこまで善人なのか。  青山は一番後ろの席に座り、佐々木はドア付近に座った。  佐々木がドア付近に座ったのはフェイントに引っかからないためだった。  尾行を疑う人間は、降りるつもりのないバス停で一度立ち上がり、前に移動して降りると見せかけて別の席に座る。尾行する人間はここで降りるのかと、同時に立ち上がり後を追うが、同じように前方の椅子に座り直すしかなく、尾行がバレてしまう。  ドア付近に座っていれば、降りるのを確認して後を追えばいい。  老婆が立ち上がった。青山は駆け寄り、荷物を持つとそのまま一緒にバスを降りた。佐々木も慌ててバスを降りる。 「すみませんねぇ、荷物を持ってもらいまして」 「いえ、ついででしたから。どなたかが迎えに来られるのですか?」 「このバス停で待っていたら、若いもんが車で迎えに来ます」 「じゃあ、私も隣でしばらくいさせてください。おっちょこちょいで、バス停を間違えて降りてしまいました。次のバスを待ちます」  老婆と青山の話を耳にしながら、ちょっと待てよ、俺はどうすればいいんだと佐々木は天を仰いだ。尾行がバレてしまうと。  意を決して、佐々木は二人に近づいた。
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