1

1/1
61人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ

1

その日がいつだったか、今はもう思い出せない。 深夜、部屋をノックする音。 「......一緒に寝てもいい?」 そう言って、俺のベットに潜り込んだお前。 胸に寄り添い、下から俺の顔を覗き込む。すっと腕が首に回される。 潤んだ瞳。薄紅色に染まった頬。薄く開いた紅い唇。その色香に、俺は抗えなかった。 身体を重ね。俺の下で乱れるお前。 行為のあと 「......おやすみなさい」 と呟き部屋を出ていった。 こんな夜を、何度も繰り返している。 決して、朝まで一緒にいないお前。ベットに残るお前の香りと、俺の背中に残された爪痕が、夢では無いことを証明してる。 「......どうして?」 聞きたくても聞けない言葉。口に出したら、もうお前は、この部屋に現れない。そんな気がするから。 俺はこんな夜を、もう手放せなくなってる。 窓から空を見上げる。全ての音を消して、降り続く雨。こんな日はきっと..... .........コンコン。 ノックの音が聞こえる。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!