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仕事から帰った僕を、玄関で迎えてくれたあなた。すぐに膝裏から抱き上げられて向かった先は、バスルームだった。 有無を言わせず重なった唇。いつもより強引に脱がされる服。 「入浴剤貰ったんだ」 そう微笑んだあなた。言葉と笑顔と行動が、ちぐはぐで………僕は何も言えなかった。 そして今…… 僕はあなたの肩に額をつけて、短い呼吸を繰り返してる。 「..あっ...ん」 白く濁ったお湯が、ちゃぷんって揺れる。お湯の上に浮いてる花びらが、ゆらゆらと動き出す。 お湯の熱さと、あなたの熱さにのぼせそう…… なぜ、あなたがこんな性急に求めてくるのか。 きっとそれは、ミーティングが終わった後、あいつから聞かされた話が、関係してるのかも…… 「お疲れ!」 ミーティングルームを出て、部屋に戻ろうとした僕の肩がふわっと抱かれた。 「……お疲れ」 綺麗な顔が、顔のすぐ横にあって少し体をずらす。 「なんだよ……」 訝しげな顔をして、僕の肩をぎゅっと抱き直したのは、僕の親友。同期の彼は、この顔と人懐っこい性格で、女の子達にかなり人気がある。本人はまるっきり、その気はないけど…… 周りの視線が痛いんだって……… こっちの気持ちなんて、ちっとも気づかないで歩いていく。 「……さっきは、びっくりしたな」 僕にアメリカーノを差し出しながら、少し小声で話し出す。自分は飲めないコーヒーショップに僕を連れて行ったのは、話したいことがあったのか…… 「……何が?」 「……あの人、いきなりガラスをバンって叩いたから……」 「……叩いた?」 「そうだよ。お前も中から飛び出して来ただろう」 あの時の事か……ミーティングが始まる前、急に大きな音がして見ると、廊下に佇むあの人がいて。ガラスにぶつかったのかと思って、慌てて外に出たんだ。 「……あの人……お前の事、可愛いって話してる奴らの会話を、聞いてたんだよ」 「……可愛いって…なんだよそれ」 「……それに、課長とイチャイチャしてたのも見てたし」 「イチャイチャなんてしてないよ!」 「……そーかなぁ。まぁあの人にはそう見えたんじゃないか……いきなりガラスを叩くから、こっちが驚いたよ」 「………」 「……可愛い恋人を持つと、気が気じゃないんだろうな」 僕達の事を、唯一相談している親友の助言。 内心では、やきもち妬いてくれるなんて嬉しいと思っていた。 早く帰って、あなたを抱き締めたいと…… 「……帰ったら大変そうだな」 そう言って意味ありげに笑ったあと、残業を手伝ってくれたあいつには、明日ランチを奢らなきゃ。 白く濁ったお湯の中。気が逸れた僕を引き戻すように、あなたの両手が僕の腰を動かす..... それに合わせるように揺れる花びら。 「.........あっ.....待って」 彼の腕が僕の腰から移動して、身体を起こされた。 「.......はぁ....俺を見て」 あなたの熱を持った瞳が僕を見つめる。いつもの柔らかい優しい瞳じゃなくて、僕を酔わせる大人の漢の瞳。 「.....お前の溶けてる顔が好き.....ほら見てごらん」 そう言って今度は、僕の顔が鏡に写るように身体を動かす。 「....いや....んっ....」 鏡に写った僕の顔。恥ずかし過ぎ て目を逸らす。 「....ほら.....見て.....最高に可愛い」 乱れて額に掛かっ た前髪を、あなたが整えながら言う。 紅く蒸気した頬。潤んだ瞳。だらしなく開いてしま う口元。僕は見ていられなくて、あなたの唇を挟むようにキスをした。 どうやったらこの想いがあなたに届くのだろう。あなた以外いらない、いつもそう思っているのに…… バスルームに入って直ぐ、お互いを洗いあっただけで、もう僕の身体は蕩けていた。いつも置いてある容器にそっと手をのばすあなた。 「....ここも....」 長くて綺麗なその指が、僕の中も蕩けさせていく。脚の力が入らなくなり、身体を預けながら囁く。 「.......ねぇ....も う....お願い」 欲しがったのは僕の方からだった。 壁に背中を着け、僕の片足を持ち上げた。あなたの熱がゆっくりと僕を貫いていく。 「......風邪引くかな」 そう呟いたあなたが、僕を持ち上げ湯槽に入る。入ったままのあなたの熱が更に奥まで届き、僕の身体が仰け反る。 お湯の中でゆっくり繰り返される刺激と、お風呂の中でいつもより甘く響く僕の声に酔わ される。 あなたは勘違いしてる......。あなたの周りの全てのことが、気になるのは僕の方なのに…… 「......そろそろ出ないと」 あなたが僕の耳朶を舐めながら囁く。 「.....やだ.....」 「...明日も....忙しいだろう」 諭すように僕に囁くくせに、僕を動かす手は止まらない。時々下から突き上げられ、僕の身体がまた仰け反る。 「.....あ.....明 日は....んっ..現場に...直行だから....んん.....」 僕の言葉に一瞬動きを止めるあなた。 「.......何時から?」 「……11時…」 また、律動を始めながら耳元で囁くあなたの顔を伺うように見ると、そ の瞳の色が変わった。 「.....じゃあ、たっぷりと楽しめるな」 「.....えっ.....あぁんっ」 僕を一 度だけ突き上げ、横に降ろす。僕の中から、あなたがいなくなったことが心細くて動けずにいると。 「......さぁ....出るぞ。続きはベットで....朝まで離せないかも……」 「.....朝まで……?」 腕を引かれ、お風呂から出た僕の背筋が一瞬寒く感 じたのは......期待....それとも?
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