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Silver Spoon........。
新しい命の誕生に、何の贈り物が良いか調べていたら画面に現れた言葉。
産まれた子供が一生食事に困らないように。
そんな意味を込めて贈る品物。
シルバーは、魔除けの意味もあるのか.....。
初めて知った。
兄貴のところに産まれた俺の初めての甥っ子。あいつも連れて会いに行ったら、兄貴はどんな顔をするだろう……
俺の大事な人達に、そろそろあいつを会わせたい。
早速、いつもは行かないアクセサリーショップに行き、色々な形のシルバースプーンを見せて貰った。
「最近は、実用的な物を選ばれる方も多いですよ」
店員さんの言葉と、可愛いデザインに迷いながら決める。
「.......これに決めます」
「ありがとうございます。御包みしますので、商品など御覧になってお待ちください」
そう言われ、シルバーのアクセサリーが並ぶショーケースを見てみる。
これ.......
1つのアクセサリーが目に止まった。
頭の中にお前の顔が浮かぶ......
そういえば.......俺......お前にプレゼントって、渡したこと無かったな。
恋人としてのプレゼント。
もちろん記念日は、花束やワインでお祝いしてたけど........。
シルバーには、愛されて一層輝きを増す不思議なパワーがあります。
ショーケースに飾られた言葉に目がいく。
月の女神に護られるか.......
俺達の始まりの頃......月の輝く時間に、俺の部屋を訪れていたお前を想い出す。
あの頃は.....あの時間に、あの場所でしか.......お前を感じられなかったのに.....
「........すみません。これも頂けますか?」
お前はどんな顔をするだろう......
明らかに緩んだ顔をした俺に、店員さんは優しく微笑んでくれた。
家に帰ると、一足先に帰っていたお前が、玄関に向かってパタパタ走ってくる。
「....おかえり」
「.....ただいま」
言いながら抱き締めてキスをする。
いつもならここで離れるのに、そのまま手を繋ぎリビングへ向かう。
「.....どうしたの?」
不思議そうに俺を見つめるお前をソファに座らせると、鞄から小さな箱を取り出して、お前の手の上にのせた。
「.....これは?....」
「.....プレゼント」
「.....僕に?」
お前は予想通り、花のような笑顔を見せると箱を開けた。
中には、シンプルなシルバーの細いネックレス。
「.....俺のもあるんだ」
もう1つの箱から同じ形のネックレスを出した。
「.....フフフ.....お揃いだ…小さな三日月がついてる」
「……ああ…なんとなくお前のイメージで…」
「……三日月が?」
「……お前を待ってる時によく見てたから」
俺の言葉に目を伏せたお前が、優しくキスをくれる。
「.........着けていい?」
「.....うん」
お前の首に、腕を回しネックレスを着けた。
「......じゃあ...僕も」
今度は、お前が俺に着けてくれる。
お前は、嬉しそうに三日月の部分に触れながら呟く。
「.....でも....急にどうして?今日は、何でもない日だよね?記念日でも誕生日でもないし.....」
「........う~ん..........何でもない日だからかな」
黙って俺を見つめていたお前の腕が、自然に俺の首に回る。
「.....何でもない日が.....幸せだね」
そう言うお前の腰に、腕を回して抱き締めた。
そう......この何でもない日が、俺にとってどれ程幸せで大切なのか.....。
「......いつか.........お揃いのリングは2人で選びに行こうな......」
耳元で囁くと、頭を持ち上げ、驚いた顔で俺を見つめるお前。
少しずつ潤んでいく瞳が近付いて、俺の唇にお前の震える唇が、重なった......
それはきっと......
そう遠くない未来に......
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