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「一緒に行きたかった.....」 暗い部屋で1人呟く。 いつもの部屋なのに凄く広く、寒く感じるのはなんでだろう。 「……甥っ子の顔を見に行かないか?」 そう、あなたがせっかく誘ってくれたのに、急に入ったクライアントからの要望で、一日仕事になってしまった僕。 「……別の日にしようか」 あなたはそう言ってくれたけど、せっかく楽しみに待っているお兄さん達。 「……僕はまた今度行かせて貰うから………そうだ、せっかくだから泊まっておいでよ」 そう言って笑顔で送り出したんだ。 でも.......凄く寂しい。 朝まで一緒にいた。まだ、丸一日だって離れてないのに……… 「……お前のこと、兄さんに紹介したいんだ」 照れくさそうに言ったあなたの言葉が、凄く嬉しくて……… 「……赤ちゃん、会いたかったなぁ」 僕は小さく呟くと、それを振りきるようにベットに置いてあった、今朝まであなたが着ていたパジャマを持った。 シャワーを浴び、あなたの少し大きいパジャマを着てキッチンに行く。 二人色違いのマグカップを手に取る。 今日はあなたのマグカップ。 お砂糖を入れた甘いホットミルクを作り、あなたが大事にしてるブランデーを、少しだけ滴す。 甘いホットミルクからは、ブランデーのいい匂い...... パジャマからは、大好きなあなたの匂い....... これで1人でも眠れそうかな...... 今朝まで一緒に居たベットに座ると、静かな部屋に雨の音が聞こえてきた。 「.......ああ。そうか......雨のせいだ」 僕がこんなに寂しいのも、あなたが恋しくて仕方ないのも....... きっと......この降り続く雨のせい。 僕は、マグカップをサイドテーブルにそっと置くと、あなたの枕に顔を埋めた。 大きく息をして、あなたを感じる。 「.......逢いたい」 僕.......こんなにあなたが好きなんだね。自分で少し可笑しくなった。 ピコンって、不意に携帯の音がして手を伸ばして見ると…… 《シャワーして、歯も磨いたか?》 「.......フフフ。子供じゃないんだから」 あなたからのメッセージに、思わず笑みが溢れる。 《ちゃんとしたよ。もうベットに入った》 《偉いぞ》 《そっちは?ベットに入った?》 《まだ........でも、寝る前にお前の顔が見たい》 《フフフ......どうやって?》 《今のお前。写真で送って》 《.......やだ》 《なんでだよ.......送って。送って。送って》 「.......もう。しょうがないな....フフ」 僕は携帯を構えると、写真を撮ってあなたに送る。 さっきまであんなに寂しかったのに、あなたとのやり取りに、雨の音は感じなくなっていた。 あなたからの返事を待っていると、 《やっぱり帰る》 その一言だけが返ってきた。 「.......えっ?」 その後は、いくらメッセージを送っても既読にならなくて........。 1時間後、玄関から飛び込むように帰ってきたあなたに抱き締められた。 「......どうしたの?」 「.......お前が......俺のパジャマ着てるから.....」 「...........」 僕は、あなたの背中に腕を回す。ぎゅっとしがみついた大きな背中。 僕の為に帰ってきてくれた、愛おしい背中。 「.......愛してる」 雨の夜は、冷たくて寂しい....月も星も見えないから...... でも、あなたの温もりに包まれる雨の夜は、少しだけ愛おしい......
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