62人が本棚に入れています
本棚に追加
18
アラームの音で目が覚めると、隣に彼の姿はなかった。
今日も僕よりも出社時間が早いって聞いてたから、仕方ないんだけど……
起きて「頑張って」って、言えば良かった....
重い気持ちのまま支度をして、会社に向かう。今日も合同の打ち合わせがある。
ミーティングルームに行くと、熱心に話をする課長とあなたがいた。
あなたのアシスタントをしている人と三人で並んでるのに、二人だけに目がいってしまう。
僕は部屋の隅の席に座って、二人が視界に入らないように窓の外を見ていた。
「.......どうした?」
不意に頭の上から聞こえる親友の声。
「.....何でもない」
「......ふ~ん」
隣の椅子を引く音がする。
「.....あの人。頑張ってるな」
「....うん」
「.....ケンカか?」
「....ううん」
俯いたまま首を横に振った。
急に頬をむぎゅっと掴まれて、見上げる。
「何だよ!」
「....泣きそうな顔してる」
「.................」
「......俺にも話せないの?」
「.............」
顔を上げたから、並んで微笑む二人が見えて、僕は泣かないように唇をきゅっと結んだ。
「.......やきもち?」
「ち....違うよ!」
「..........それで?」
「だから.....違うよ!別に仕事なんだから、やきもちなんて.....」
「..............そういうことか」
長い間側にいるこいつには、直ぐに見透かされてしまう。
「......やきもちとか、そういう訳じゃなくて....」
「....なくて?」
「..........二人が並んだ姿がお似合いで....」
「.......お似合いで?」
「...彼の事見て綺麗に微笑むし、なんなら距離が近いし。それに.....彼にさりげなく触れたりするし……」
「.......それって、やきもちじゃないの?」
「........分かんない」
僕はまた下を向く......
「......……あの人…まただ」
「....またって、何が?」
親友の呟きに思わず顔を上げる。
「.....あの人……さっきから、鎖骨の下辺りを時々触るんだ。痛いのかな.....」
鎖骨の下に触れる?僕は打ち合わせを始めようとしている彼を見つめた。
「.....ほら。また...」
「......あの場所は....」
彼の手が、昨日の夜、僕が痕を付けた辺りに触れる。
打ち合わせが始まっても、時々その場所に触れては微笑む彼。
急に気持ちが浮上する。
「.....あれは.....秘密の合図か?」
隣で僕の顔を不思議そうに覗き込む親友を、抱き締めたくなった。
最初のコメントを投稿しよう!