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暗い部屋の中、カーテンから差し込む光を頼りに中に進む。 奥のベットに彼を確認しながら、ソファに上着を置くと、目の前のローテーブルに目を奪われた。 1本.....2本........。 そこには何本もの飲み終えたお酒の瓶が、乱雑に置かれてた。 「........やっぱり無理してたんだ....」 僕は軽く眉をしかめた。 今日は会社の同期会だった。何となく彼が嫌がるかなと思って行くつもりのなかった会。 「お前来ないの?」 俺のデスクまで来て尋ねた親友に、予定があると嘘をつこうとしていると、 「.......行っておいで」 いつの間にか、書類を手に後ろに居たあなたが僕の耳許で呟いた。 驚いて、無言であなたの顔を見つめる。いつもの穏やかな笑顔で、うんうんと首を縦に振っていた。 だから行くことにしたんだけど......。 僕はふぅと小さく息を吐き出すと、シャワールームに向かった。 少し酔いが残っている身体に、簡単にシャワーを済ませキッチンで水を飲む。 冷たく冷やされた水が心地良い。 不意に後ろから抱き締められて、水が零れそうになった。 「.......俺にもちょうだい」 僕の肩に頭を乗せ、首筋に向かって囁くあなた。 「.....うん」 僕はあなたにペットボトルを渡そうと、身体の向きを変えた。 なのに......。 あなたが僕を抱き締める力を、緩めようとしない。 「............これじゃ飲めないよ」 僕はまるで小さな子供をあやすように、あなたの頭を撫でる。 「.......飲ませて」 小さく声が聞こえたと同時に、抱き上げられダイニングテーブルに座らされた。 僕より目線の低くなったあなたが、下から僕を見上げる。 「......飲ませて」 もう一度言われた言葉。 僕はペットボトルの水を口に含むと、あなたの両頬に手を添えた。 少し傾けたあなたの口に水を移す。僕の気持ちと一緒に…… 溢れ出す想いが零れないように、ゆっくりとゆっくりと........。 「.....ん......ん」 あなたの口から漏れる声に、僕の身体が熱くなる。 「.....もっと....」 繰り返しねだる彼が愛おしくて、僕は何度も水を口に含んだ。 口許から零れ、首筋に向かう水の線。それさえも逃さぬように、あなたの唇が僕の首筋をなぞった。 堪らず反れる背中.......。 その瞬間、僕は抱き上げられ近くの壁に背中を押し当てられた。 身体の隙間を埋めるように抱き寄せるあなた。 強引に塞がれた唇は、容易くあなたの熱を迎え入れた。熱い口内をあなたの熱が僕の熱を探して動き回る。 絡められた熱........。 息苦しさと甘い痺れに、立っているのが辛くなってくる。 必死で、その大きな背中に腕を回す。 「.......ん.....ん.....っん」 ......お願い.......もう......ベ ットに連れていって欲しい。 言葉にしたいのに.........あなたの熱は甘い毒となって僕の唇を痺れさせていく。 ようやく離された唇に、身体が一気にあなたの胸に崩れ落ちた。 息を整えていると、顎を掬われる。 僕の顔を見て満足そうに微笑んだあなた。 「.........お帰り..」 そう呟いたあなた。 その色香を纏った眼差しが、僕の唇に注がれる。 あなたの狂おしい程の視線に、僕はもう一度瞳を閉じた.......。
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