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空港と同じ様に、ほとんど人影の無い飛行機に乗り込む。 「......疲れてるんだから眠っておこう」 あなたはそう言って、僕にブランケットを掛けると、眼を瞑ってしまった。 聞きたいことが山ほどあるのに........ そんな僕も、仕事の疲れとブランケットの温かさでいつの間にか眠ってしまったようで、次に眼を開けた時は、飛行機が着陸した後だった。 そのまま、タクシーでホテルに向かう。 部屋に入ってシャワーを浴びて、やっと二人でベッドに入った。 「.......黙っててごめん」 あなたが、僕を後ろから抱き締めるように座る。 僕は、その胸に頭を預けながら問い掛けた。 「......長崎に来たのは、明日が父さんと母さんの結婚記念日だから?」 「.....うん。.......それだけじゃ無いけど」 「......どうして結婚記念日って知ってたの?」 「.....お前。家のパソコンからケーキとお花の注文しただろう。それの受注メールを見たんだ」 「.......そっか」 「.....結婚25周年だろ?直接、お祝いしたいかなと思ったのと.....」 「........それと?」 「......俺達が一緒に暮らし出した報告を、ちゃんとしたかったんだ」 「...........」 僕達の事は、付き合い始めた頃、父さんと母さんが東京に来た時に二人で話をした。 「.........反対はしないし、お前が幸せならそれでいい........でも少し時間をくれないか」 そう言われて........ 父さんが僕の為に、無理をして納得しようとしている感じがして、僕は父さんと少し距離を置いてしまっていた。 きっと....そんな僕を心配したんだよね.... 「............ありがと」 僕の手が、ぎゅっと握られる。 「........俺も.....ちょっと緊張してるんだ」 そう言うあなたの指に、自分の指を絡めた。 身体の向きを変えて、二人で抱き合う形で横になる。 僕の額に唇が触れて、その温もりに包まれると、二人で眠りについた。 久しぶりに訪れる僕が育った家。チャイムを鳴らすと、少しして玄関の扉が開いた。 「........お帰りなさい」 少し驚いた顔をした母さんが、僕の手を取る。瞳を潤ませながら僕の頬を撫でる母さんに、僕も鼻の奥がつんとなる。 久しぶりの母さんの手の感触。 「......いらっしゃい」 母さんが、彼の手を取って微笑む。 この瞬間だけで、来て良かった......僕はそう思った。 三人で中に入ると、リビングで父さんが出迎えてくれた。 父さんは、しばらく黙って僕を見つめたあと 「......元気だったか?」 それだけ聞いた。 「.....うん」 そう答えると 「......二人とも?」 そう言って彼を見る父さん。 「......はい」 彼の返事に、納得するように何度も首を縦に振った父さん。 「......父さん、母さん。結婚記念日おめでとう」 「.....ありがとう。あなたからのプレゼント、さっき届いたのよ」 母さんが指を指した方に、綺麗に飾られた花。嬉しそうに微笑む母さん。 「.......一緒に昼食に行かないかい?あの食堂、まだあるんだよ」 父さんの誘いに、僕と彼が大きく頷いた。 「.....懐かしい.......」 僕が小さい頃、家族でよく来た食堂。父さんの友達がやってる其処は、僕の大好きな物が沢山あった。 食堂のおじさんが、店の奥から僕を見つけると駆け寄って喜んでくれた。 「.......好きな物、いくらでも作るよ」 そう言って厨房に消えたおじさん。 テーブルいっぱいに並んだ、僕の好物。母さんが、僕達のお皿にどんどん乗せていくから、僕も彼もずっと口の中がいっぱいだった。 時々、父さんのグラスにお酒を注ぐ彼。嬉しそうに飲み干す父さん。 「.....父さんに、よく連絡をくれるそうよ」 母さんが二人に聞こえないように、小声で僕に言う。 「.....連絡?」 「.....そう。貴方の事....いろいろ教えてくれてるの」 ........知らなかった 僕が父さんと距離を置いてしまった代わりに、彼が近付いてくれていたんだ...... 僕は目の前が涙で滲んでいくのを、必死に耐えた。
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