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父さん達に見送られて、家を後にする。
真っ直ぐ空港に向かうのかなと思っていたら、着いた場所は海辺のコテージだった。
「.......せっかくだから、もう一泊しよう」
そう言って少し照れたように笑うあなたが可愛くて、僕はその手を握った。
キッチンとリビングダイニングのある一階。
海が見える大きな窓。
「.......ねぇ見て.....綺麗な夕陽だね」
荷物を置いた僕達の目の前で、海全体をオレンジ色に輝かせて夕陽が沈んでいく。
「......ここから海岸に降りられるみたいだ」
リビングの横にある大きなウッドデッキには、そのまま海岸へと続く階段がついていた。
手を繋いだまま、波打ち際まで歩いていく。
季節外れの海岸は、人影もない。
ゆっくりと沈んでいく夕陽が、海水に鏡のように映って、目にするもの全てを黄金色に変えていく。
僕達は言葉もなく海を見つめてた。聞こえるのは波の音だけ........
「.........連れてきてくれてありがとう」
そう言うと、あなたが僕の身体を包み込むように後ろから抱き締めてくれる。海風に冷えた身体が、じんわりと温まる。
「........俺......お前の事を離さないって決めたんだ......」
「.......うん」
「......だから....俺に出来ることは何でもしようと思った」
あなたの腕を抱き締めると、視界が滲んでいく。
「......お父さんとの約束が先になったけど....これから先.....来年も再来年もずっと、俺の側に居てくれるか?」
僕は身体の向きを変えて、あなたを見上げる。その頬に両手を添えて引き寄せると、唇に自分の唇を重ねた。
「.......忘れられないプロポーズだね」
唇を離して伝えると、あなたが首を傾けて僕の目を見る。
「......返事は?」
「.......はい.......っ」
続く言葉は、返事と共に降りてきたあなたの唇に塞がれる。
それから僕達は、空が蒼く変わるまで何度も何度も、長いキスを繰り返した。
冷蔵庫の中に用意されていた食材で、あなたが夕食を作ってくれる。
僕は手伝っているのか、邪魔をしているのか.....
周りをうろうろしては、その身体に抱きついていた。
「......ほら.....火傷するから、先に座ってろ」
とうとう彼に怒られて、仕方なくテーブルに着く。
二人の大好きなお酒を飲みながら、あなたが作った美味しい料理を食べる。
...........僕、こんなに幸せでいいのかな。
少しの不安は、あなたの笑顔で安心に変わっていく。
「........いつかしたいな....結婚式」
「......結婚式?」
「......そう。家族と友達と、俺達を支えてくれる人達に、お前への愛を誓うの」
少し酔った様子のあなたが、頬をうっすら赤くして楽しそうに話す。
「.....うん。僕も誓う」
「......お前にウエディングドレスを着せて」
「.....それはやだ」
「....ククク.....なんでだよ。似合うぞきっと」
「........酔ってるでしょ」
「....酔ってないよ.....」
そう言いながら、あなたの瞼が重そうになってきた。
「....ここで寝ないでよ」
「.......寝ないよぉ......でも.....ベッドに連れていってくれ」
珍しく僕に甘えるあなたが愛おしい......
僕の肩をに掴まるように歩くあなたを、ベッドに連れていく。
二人で倒れ込むように横たわると、僕を抱き締めたまま寝息をたて始めた。
.......疲れたよね
この計画を立てて、昨日まで頑張って働いて、今日は......凄く緊張したよね
........僕のために
「.......僕も.....あなたを離さないって決めたから」
眠ってしまったあなたに向かって呟く。
ずっと与えてもらうばかりの僕が、あなたに出来ることは何だろう........
大切で大切な一日の終わり………
僕はその胸に頬をすり寄せて眠りについた。
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