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雨を降らせていた重たい雲が、風に流され消えていく。出番を待っていたかのように輝きだす月。もうすぐ終わりを告げる雨の季節。
雨がすっかり上がったら、お前はもうここに来ないのだろうか……
いつものように、扉をノックする音。当たり前のようにベットに潜り込むお前。
その様子を、扉の前でなんとなく見つめていると、
「......来ないの?」
顔を少し上げて呟くお前。
隣に横になると、すっと俺の腰に手を回し胸に頬を埋める。
顎を掬おうと手を伸ばしかけた時、
「.....今日は、このまま抱き締めていて」
可愛いお前のわがまま。返事の変わりに、伸ばした腕を背中に回し抱き寄せた。
「......朝まで、ここに居たい」
「.......」
決して朝まで一緒に過ごさなかったお前。嬉しいそのお願いに、抱き締める手に力がこもる。
優しく髪を撫でていると、少しだけ顔を上げ、いつもの色香を纏った表情で俺を見る。
「........好き」
そう呟いたお前。突然の告白。
この小悪魔は、このまま朝まで抱き締めるだけなのは、俺にとって拷問だってことに気がついているのだろうか。
勝手に想いを告げて、腕の中で寝息をたて始めるお前。愛おしいその寝顔に、
「.....もう.....離さない」
そう呟いてキスをした。
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