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あの日から何日も経ったのに、このベッドに一人で眠ることに慣れない。 どうしても空けてしまう左側。 いつも貴方に起こしてもらうまで起きれなかった僕が、朝陽が昇る頃には目覚めてしまう。 今日も、カーテンの外がうっすら明るくなったころ目が覚めた。 ベッドに仰向けに寝たまま天井を見上げる。 ………こんな模様だったっけ? いつも貴方の胸に抱かれてたから、気づかなかったよ。 僕は少し考えてから、スマホを手に取った。 …………まだ寝てるかな でも………声が聴きたい 画面の上で、うろうろする指。 その手を振るわせて、突然届いたメッセージ。 「..........?」 愛しい人から送られてきたのは、一枚の写真。 …………これは………天井? もしかして………貴方もベッドで横になってるのかな……… 思わずフッっと笑ってしまう ........僕と同じこと考えてる? そのあと届いたもう一枚は..... ベットの空いたスペースに、貴方の長い腕だけが写っていた。 .........腕枕してくれてたんだ なんだか.....気持ちがふわふわしてくる また直ぐに送られてきたのは、部屋の窓から見える景色。澄みきった青い空と見たこともない建物。 次の写真は、テーブルの上に置いたマグカップ。温かそうな湯気が出てる。 写真だけで、言葉もないメッセージなのに、心がゆっくり解れていく。 ............貴方の顔も見たいんだけど そうメッセージを打ちかけて止めた。 ........そうだ....僕も まずは....僕もさっき見ていた天井の写真を送る。 それから、ベッドの左側……… 貴方が居るはずのその場所に、寄り添うように手を置いてる写真。 そして、カーテンを開けて貴方も見慣れた窓からの景色。 …………雲の切れ間から太陽が覗いてて、まるで今の僕の心みたい トーストと目玉焼きの朝食。次々に写して送る。 離れてるのに、同じ景色を見てるようで嬉しい。 『残さず食べろよ』 朝食を、少し残して終わりにしようと思っていた僕に、送られてきた一言。 初めての言葉がそれ? まるで僕のことが見えてるみたいな貴方に、部屋の中を見回してしまう。 その後は、洗面所で歯を磨く貴方。やっと見えた姿は鏡越しで、顔にスマホがかぶってた。 『......行ってきます』 と、部屋全体の写真。 『......行ってらっしゃい』 そう送って一気に寂しくなった。 ........終わりかな 「.......顔が見たかったな....」 少しだけ尖る唇 すると、もう一度送られてきたメッセージ。 .......それは 『......愛してる』の一言と、めちゃくちゃ照れくさそうな貴方の横顔。 「……フフ……耳まで赤くなってる」 抱き締めたくなるその横顔に、逢いたさが募る。 通話ボタンを押して、スマホを耳に近づけた。 「……もしもし……僕も愛してる」 次に続ける言葉は…… ………今度の休みに、逢いに行ってもいい?
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