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37
こんなに誰かに求められること……今まで生きてきた中であっただろうか……
僕の知らないあなたの部屋。
まだ靴も脱いでない
玄関に入って直ぐに抱き締められた。
あなたの長い腕が僕の身体を引き寄せ、身動きとれないほど強く絡み付く。
僕の背中から頭の後ろに移動した手で、上を向かされた顔。あなたの目が僕の唇を捉えたのが分かった途端。
キスが止まらない………
「……ん……んっ……フッ」
立っていられなくなった身体が壁に押し付けられて、息苦しいのに離れて欲しくなくて………
あなたの背中のシャツを、手繰り寄せるように掴んだ。
こんな最初から深く深く繋がるキス
どんなに僕を求めていてくれたのか………
それが分かって、目頭が熱くなる。愛しさで泣きそうになるなんて初めてだ。
長い時間をかけてお互いを確かめあった後、唇がゆっくりと離れていく。
「……まだ足りないけど」
そう言って微笑むあなたがもっと愛しくて……
「……明後日の夜まで、時間はたっぷりあるよ」
本当はそれだけじゃ足りないぐらい、僕もあなたを欲してるけど、その言葉は胸にしまった。
「……腹減ってないか?」
靴を脱ぎながらあなたが言う。
「うん、飛行機に乗る前に食べたから、コンビニおにぎりだけど…あなたは?食べてないんじゃない?」
「俺も、後輩の差し入れのおにぎり食べた……ってことは……」
あなたが一人頷いたと思った瞬間、膝裏にあなたの腕が入って抱き上げられた。
そのまま、部屋の中に入って行く。
「ち…ちょっと」
「ん?」
僕の制止も聞き流して進むあなた。落ちそうになりながら必死で掴まっていると、あっという間にベッドに降ろされた。
「まっ………待って、シャワー浴びたい」
「だめ、無理、待てない」
いつもなら僕の気持ちを優先してくれるのに、はっきりと「だめ」と言われたことで逆に気持ちは高ぶっていく。
このまま身を任せて、今日は、めちゃくちゃに抱かれてしまおうか……
耳元であなたの熱い吐息が漏れる。
僕を抱きたくて、らしくない行動をしているあなたが愛しい。
ふと顔を上げたあなたが、切なく僕を見つめる。
「……シャワー、俺が先でもいい?」
やっぱり僕の願いは優先してくれるんだ……
口許を緩めながら「うん」と答えた。
ガバッと身体を離して、バタバタと部屋を出るあなた。
………そんなに慌てなくてもいいのに
僕も身体を起こして、部屋の中を見回す。
ここがあなたの仮の部屋………
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