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仕事に行く前に、コーヒーが飲みたくなって車を停めて貰う。
カフェまでの道沿い。ふと目を移すと、沢山の色とりどりの花が並ぶ花屋を見つけた。俺の目に留まった1つの花。
黄色くて小さな花。
「あいつの笑った顔みたいだな」
花束にして貰って車に戻ると、車の中が春の香りに染まる。
車が到着し、花束を持って事務所に入ると、愛おしい顔が向こうから歩いてくる。
「ここでは、渡しずらいな」
そう思っていると、明らかに不機嫌そうな顔でこっちを睨むお前。唇を尖らせ横を通りすぎて行った。
「....喜ぶと思ったのにな」
枕元に飾った花を見ながら呟く。
いつもの時間になっても、部屋に来ないお前に、花束の写真とメッセージを送る。
「お前の笑った顔に似てるだろ」
数分後、パタパタと廊下を走る音。俺の部屋の扉が勢いよく開く。
「....その花束。僕のためだったの?」
「当たり前だろ。他に誰に...」
正面から抱きつかれて少し体勢を崩す。
「....だって。事務所で持ってたから....。誰かにプレゼントかなって。花束がよく似合ってて....」
少しずつ声が小さくなるお前を抱き締める。
小さなヤキモチが愛おしい。
「....お前以外に誰に贈るんだ?」
俺の胸に額をつけて下を向いてたお前が、ゆっくり俺を見上げると、あの花のように微笑んだ。
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