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玄関に入って靴を脱いでる間に鳴った、僕のお腹の音。 隣で「やっぱり、とんかつが先だな」って笑うあなた。 家とは違うキッチン。必要な物は最小限しかなかったから、今回のとんかつ作りで少し増えたツールに、もうこれ以上増やさないで欲しい……そう思った。 あなたの居場所は、ここじゃないから…… ここの暮らしが快適になって欲しくないなんて、僕のわがままが浮かんで少し反省した。 どこにいても、あなたには快適に過ごして欲しい……そう思うのが本当なのにね。 とんかつは、あなたがいつも僕に作ってくれる味で最高に美味しかった。 少し泣きたくなるくらい…… いつも当たり前に食べてたから…… 「片付けは僕がする」そう言ったのに、二人で並ぶ狭いキッチン。 肩と肩が触れあって、あなたの鼻歌を聴いて、やっぱり少し泣きたくなった。 今日はちゃんと、浴槽にお湯を溜めて入るお風呂。 でも、二人で入るにはちょっと狭くて一緒に浴槽に入るのは無理だった。 なんとか身体を縮めて一緒に入ろうとするあなたが必死で可笑しくて、可愛くて、僕は笑いが止まらなかった。 「明日はどこかに出掛けよう」 二人で横になるシングルベッド。あなたの腕枕で横になると、あなたの声が頭の上から聞こえた。 「……どこに?」 「……うーん、ずっと仕事してたから、この辺のこと良く知らないんだった」 「ククク………僕は出掛けなくてもいいよ」 「……そうしたら、ずっとベッドにいることになるぞ?」 「……僕はそれがいい」 髪にあなたの唇が触れて、僕はあなたの胸にある手をそっと滑らせて抱き締めた。 「……もうこれ以上は……」 不意に強く抱き締め返されて……… 「……離れたくなくなる?」 あなたの胸に問いかけた。 「……うん」 冗談めかして聞いた言葉に、素直に返事が返ってきて、やっぱり泣きそうになった。 せっかく、あなたと一緒にいられる大切な時間なのに……泣きそうになってばかりの僕は……バカだな。 それから………身体を起こしたあなたが、優しいキスをくれた。 あなたの愛に包まれて眠る幸せな時間。 明日なんて来なければいいと、初めて思った。
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