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昨夜から楽しそうな笑顔の裏で、時々泣くのを我慢してるお前。 それを必死で隠してる姿が、可愛くて愛しかった。 「次の休みは、あなたが帰ってきてよね」 荷物を鞄に詰めながら言う。だんだん視線が合わなくなってきた。 俺がこっちに来る時も、決して涙は見せなかったお前。 それを無駄にしてはいけないと想って、気づかない振りをしてた。 でも……… 俺は膝をついて服をしまうお前を、後ろから抱き締めた。 「我慢しなくていい」 「………」 その一言に一瞬身体を強張らせたお前。 「俺の前で、泣くのを我慢しなくていいよ」 「………」 「俺を困らせたくなくて……我慢してるんだろう……」 「…………」 「でも……俺は困ったりしないから…」 両腕で包み込むように力を込めると、お前の身体から力が抜ける。 「お前の涙は………俺が出来ることなら何でもして止めるけど、それが出来ないことなら……一緒に泣くから……」 お前の両手が、俺の腕に触れる。 「お前が泣き止んで笑顔に戻るまで、俺も一緒に………」 俺の腕に滴が落ちる。 「たくさん泣いたら、一緒に笑えるだろう?」 不意に腕の中で踠いたお前が、振り返って俺に抱きつくと堰を切ったように泣き出した。 まるで子供のように声を出して、俺の肩で泣くお前の背中をゆっくりと撫でる。 「……ッ……いっ……ズ……しょに居たい……ズッ……一人で…あの…部屋にいるのは……ズッ……寂しい」 「………うん」 「……早く……ッ…帰ってきて」 「うん」 ようやく泣けたお前が、我慢していた言葉を俺にぶつける。 その言葉一つ一つが全部「愛してる」に聞こえるなんて言ったらお前は怒るかな。 乱れた呼吸が少しずつ整って、震えていた身体が落ち着きを取り戻した頃、ゆっくりと顔を上げたお前。 「僕……凄い不細工じゃない?」 その言葉に二人で吹き出す。 「ひどいよ!そんなに笑わなくてもいいでしょ!」 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を両手で拭いながら口を尖らせる。 その頬を両手で包み込むと、俺を恨めしそうに見る。 「可愛いよ」 分かりやすく目を泳がせて照れるお前。 「泣き顔も、怒った顔も……可愛いよ」 「………ずっと泣くの我慢してたのに」 やっと戻った笑顔は、本当に最高に可愛かった。 こうして乗り越えていこう……… たとえ………寂しくたって……泣きたくなったって……離れることの出来ない俺達だから………
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