60人が本棚に入れています
本棚に追加
9
真新しいベットでシーツにくるまって微睡む時間。
重さを感じたくて、わざとお前を胸の上に引き上げた。
薄目を開けて、少し口角を上げたお前の身体を指でなぞる。
「……フフ…くすぐったいよ」
身を捩るお前を抱き締めて、幸せを実感する。
「……喉が渇いた」
さっきまで、愛しい鳴き声をあげていたから、少し渇いた声。
「……ぬるくなっちゃったけど飲むか?」
床に置いてあったペットボトルに手を伸ばそうとすると、腕ごと引き戻された。
「…ん?」
「……離れないで」
甘い掠れた声に、また身体の芯が熱くなる。そっと髪に唇で触れ抱き寄せた。
「……離れないけど、その声は喉が可哀想だ。少し飲んで」
片手で抱いたまま水を取ると、身体を起こして口に含んだ。
お前の顎を掬い、口移しで水を飲ませる。
こくんと音を立て、白い喉を動かすお前。妖艶な瞳で俺を見つめたあと、「ぬるい」と言って顔を歪めた。
くるくると変わるお前の表情に、愛おしさがどんどん溢れていく。でも、あまりがっつくと後で怒られそうだ。
気持ちを切り替えようと、もう一度水を飲んだ。
「……冷蔵庫買わなきゃな」
やっぱりぬるい水に本気で思う。ベットさえあれば、そう思っていた自分が可笑しくなる。
「……うん…洗濯機も」
「……確かに…」
シーツを指差して言うお前を見て、二人で声を出して笑った。
「……あとは、何が欲しい?」
「……うーん。ソファにテーブル、それと……」
起き上がって部屋を見渡しながら話すお前が、嬉しそうで楽しそうで………
これから始まる2人の暮らし。
お前といる時間を一秒も無駄にしたくない、そう思った俺の選択は間違いじゃなかった。
「……キッチンも何もないよね?」
そう言ってベットを抜け出そうとするお前を、もう一度引き戻す。
愛しい身体をベットに沈めると
「……離れないで」
今度は、俺からのお願いに花のように微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!