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その日がいつだったか、今はもう思い出せない。
深夜、部屋をノックする音。
「......一緒に寝てもいい?」
そう言って、俺のベットに潜り込んだお前。
胸に寄り添い、下から俺の顔を覗き込む。すっと腕が首に回される。
潤んだ瞳。薄紅色に染まった頬。薄く開いた紅い唇。その色香に、俺は抗えなかった。
身体を重ね。俺の下で乱れるお前。
行為のあと
「......おやすみなさい」
と呟き部屋を出ていった。
こんな夜を、何度も繰り返している。
決して、朝まで一緒にいないお前。ベットに残るお前の香りと、俺の背中に残された爪痕が、夢では無いことを証明してる。
「......どうして?」
聞きたくても聞けない言葉。口に出したら、もうお前は、この部屋に現れない。そんな気がするから。
俺はこんな夜を、もう手放せなくなってる。
窓から空を見上げる。全ての音を消して、降り続く雨。こんな日はきっと.....
.........コンコン。
ノックの音が聞こえる。
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