あめふりのおとをきいている

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 数年の月日が流れる。まだあの頃と一緒でバス停は静かだった。雨が降ると音を奏でる以外には。  長い時間が過ぎたバス停に水色の傘が近付いていた。真っ直ぐにバス停に向かうとそこで傘を閉じる。雨音が広がっている。笹の葉が鳴っている。横断歩道のスピーカーがちょっと壊れかけている。あの時と同じ彼女の呼吸と鼓動がオーケストラに加わった。  彼女はまたあの頃と同じように人を待っていた。  年を重ね可愛らしさを残しながらも素敵な女の人になっている。寂しがりで待つだけの女の子はそこには居ない。信じた表情でバスではなくて人を待っていた。  走って近付く足音が聞こえた。雨を気にしてない様に跳ねるような調和が有る。これもあの頃と同じ。  昔の彼じゃなかった。もっと精悍な顔をしている。待つ人の事を愛しむ表情がある。  彼は彼女の元に辿り着いた。笑顔が音の様に広がる。二人ともが嬉しそうに。  雨の音が響いている愛の詩が聴こえてる。 おわり
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