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するとニヤニヤした顔をした末長先輩と森永先生が
「なぁ、末長。赤地のあの顔、どう思う」
「そうですね~。大方、好きな人から朝食でも差し入れをしてもらったんですかねぇ?」
とか言って俺の反応を見ている。
俺は咳払いして
「そんなんじゃないです!それより先輩と先生、早くないですか?」
と話題を逸らした。
すると
「そうかなぁ?僕はいつも、この時間だよ」
風紀委員長という肩書きが不似合いな、物腰の柔らかい末長先輩がフワリと笑うと、上背も横も大きな森永先生が
「生徒より後に来る訳には行かないからな」
と笑っている。
森永先生は、代々先輩達から「ホタテマン」と呼ばれているらしく、なんでも京子さん達の時代より前からそう呼ばれているらしい。
ニックネームの由来は、俳優の安岡力也さんに似ているからだと言う事らしいが、そこから何故「ホタテマン」になったのかは謎のままだ。
森永先生と話していると、待ち合わせ時間ちょうどに今日の当番のもう1人が現れた。
末長風紀委員長は全員揃ったのを確認すると
「揃ったね、じゃあ風紀委員の朝の点検を行うよ」
そう言って校門に並んで立つ。
「うちの学校は比較的、他校に比べて違反者は少ない。だけど、ゼロという訳では無いんだ」
と話しながら、通り過ぎようとした女子を先輩が引き止めた。
「アクセサリーは、禁止になっていますよね」
やんわりと微笑みながら、末長風紀委員長が手を出すと
「これは、我が家の代々からの……」
「今日一日、お預かりするだけです。帰宅時にお返ししますので」
有無を言わさぬ笑顔で言われ、その女子は渋々とネックレスを外した。
「学校は勉学を学ぶ所です。華美な装飾品は、禁止されていますよね?これ、ダイヤモンドですよね?」
ネックレスの真ん中に光り輝く1粒ダイヤに、顔面蒼白になる。
「何かあったら大変ですから、今後、絶対に持ち込まないように。はい、生徒手帳出して」
テキパキと風紀委員の仕事をこなす末長風紀委員長に、思わず尊敬の眼差しを送ってしまう。
没収した物は、生徒手帳と一緒にジッパー付きのビニール袋に入れて森永先生に手渡して行く。
末長風紀委員長の目は、洋服を透かして見えるのか?と思う程、目敏く違反者を摘発して行った。
そろそろ朝礼10分前の鐘がなる頃、品行方正な学校には不似合いな人物がゆっくりと歩きながら現れた。
身長180cmは超えていそうな長身に、小さな顔立ち。金色の髪の毛は、朝日に照らされて黄金色に輝いていた。
ハーフらしく、彫りの深い顔立ちに高い鼻。
こんなに見栄えが良いくせに、制服のシャツをパンツから全部出し、第二ボタンまで外したシャツの下にネクタイをだらしなく締めていた。
「出た!我が校、唯一の問題児」
ポツリと呟いた末長風紀委員長の声に気付いたのか、綺麗な顔をしたその人物は片頬だけを上げてシニカル笑うと
「よぉ、末長風紀委員長様」
と呟いた。
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