出会い

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その声は引くて甘い声をしていて、この容姿にこの声は狡いなぁ~と思いながらその人物の顔を見ていた。 薄い灰色の瞳に切れ長の目で睨まれ、一学年上の先輩が『ひっ』って息を呑んだ。 薄い灰色の瞳に、俺は幼かった頃の記憶が蘇る。 『章三、章三!』 俺の背中を追い掛けていた、可愛い『ケイ』 確か『ケイ』は、ロシアと日本のハーフだと言っていたような……。 ぼんやり考えていると 「なんだ?新入生か?」 そいつは俺を見下ろし、ジッと俺の顔を見ていた。そして突然、俺の前髪を上げて眼鏡を奪い取ると 「お前……」 と呟いた。 俺が慌てて眼鏡を奪い返し、前髪で目を隠すように直していると 「荻野! 赤地の弟に絡むと、後々厄介だぞ」 末長風紀委員長の言葉に、『荻野』と呼ばれたそいつは俺を見下ろして 「何でお前が此処に居る?」 そう呟いた。 「東高とか武蔵高とかあっただろうが」 唸るように言われて、思わず舌打ちをした。 東高も武蔵高も、どちらもサッカー強豪校だ。 この近辺に住んでいて、この2校の名前を聞いたら誰もが『サッカー』だと気付く。 「え?赤地君って、サッカー部だったの?」 末長風紀委員長の言葉に 「はぁ……まぁ……」 と言葉を濁す。 すると末長風紀委員長は 「まぁ、とはいえ、我が校にはサッカー部はありませんからね。関係ない話ですね」 そう言って話しを切り上げると 「荻野! シャツはパンツの中。第二ボタンまで外さない!お前、何度言われたら直すんだ!それからその髪!」 と叫んだ。 『荻野』と呼ばれた人物は、我関せずという感じで聞き流しており、欠伸までしている。 「服装よりも髪の毛だ!何度言ったら分かるんだ?金髪は校則違反だぞ」 そう言って生徒手帳を奪う末長風紀委員長に 「あの……」 と声を掛けた。 「なんだ、赤地君」 「多分、彼の髪の毛ですが……地毛ですよ」 「えっ!」 俺の言葉に、森永先生と末長風紀委員長。 荻野先輩が叫んだ。 「昔、知り合いにロシアとのハーフが居たんですよ。その人は髪の毛が地毛で金髪でしたよ」 俺の言葉に、末長風紀委員長が荻野先輩をマジマジと眺めた。 「確かに、睫毛も眉毛も同じ色だな」 「多分、体毛も同じ色だと思いますよ」 何気なく呟いた俺の言葉に、荻野先輩はニヤリと笑い 「なんなら、脱いで見せようか?」 と、ベルトを外そうと手を掛けた。 「脱ぐな! 見せるな! お前……そうならそうと、届けを出せよ」 呆れた顔をする末長風紀委員長に、荻野先輩は涼しい顔をして 「嫌だよ、面倒くせぇ」 とだけ答えた。 「……とはいえです。そのだらしの無い服装は何ですか?みっともない!」 そう呟いた俺に、荻野先輩はニヤニヤ笑って顔を近付けると 「セクシーだろう?」 と、ピラリと第二ボタンまで外した胸元のシャツを捲った。
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