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桐楠大附での生活
「赤地君って、蒼介様の弟なんだって?」
入学早々、クラスの女子に声を掛けられた。
まず、兄貴が「様」付けされているのに寒イボが……。
「何で、兄貴に「様」付け?」
思わずぶっきらぼうに聞いてしまった俺に
「え?蒼介様は桐楠大附の女神様ですから」
キラキラした目で言われ、頭を抱えた。
「あのさ……兄貴は人間だし、トイレにも行けば屁もこくぞ」
と呟いた俺に
「い~~やぁ~~!!」
クラスの女子の悲鳴が響いた。
その瞬間、背後からチョップを食らう。
「いってぇ!」
チョップした人物を睨み上げると
「章三、お前……」
と怒った顔をした葵が立っており
「蒼ちゃんは人前でオナラした事無いぞ!大体、そういう下品な事を言うのを止めろよな!」
そう言って、もう1回チョップをして来た。
「あぁ?そんなの、人間なら当たり前だって話をしているんだよ」
「だからって、他の言い方があるだろう?」
怒る葵に
「そうよ! バカ赤地!」
と、女子に叫ばれた。
「なんと言われても、蒼介様は私達の天使なんですからね!」
そう叫ぶ女子の顔を見て、兄貴を『聖人君子』扱いする奴等の気がしれない。
ニコニコして外面良くしてはいるが、実は独占欲は強いし、頑固者だ。一度言い出したら、絶対に曲がらない。
そんな兄貴を、見た目の儚い中性的なイメージだけで『女神』とか『天使』とか笑っちまう。
翔さんなんて、兄貴の恋人の田中さん(男)に小さい頃から可愛がられていたという理由だけで、理不尽な嫌がらせをされている。
そんな兄貴を見離さず、穏やかな笑みで受け流す翔さんの方が実は器がデカいのでは?と思っている程だ。
そして俺は、この日から「女子の敵」扱いされる事になる。
当の本人は
「あっはははは! その手があったか」
って大爆笑している。
放課後、俺の家に来て葵が兄貴に報告すると、兄貴は腹を抱えて笑っている。
「笑い事じゃないよ! 蒼ちゃん!」
プンプンと怒る葵の頭を兄貴は撫でると
「章三はさ、僕が聖人君子扱いされているのを見過ごせなかったんだよ。まぁ、言い方に問題はあるだろうけど……」
そう言って微笑んだ。
ふわりと優しく微笑む兄貴は、他人が見たら『天使の微笑み』らしいが、俺から見たらめちゃくちゃ猫被ってやがるなぁ~って思う。
翔さんに対して吐く毒舌っぷりから、多分、あちらが本性だろうと俺は思っている。
でも、俺や葵に対して、良い兄貴でいたい気持ちも分かるから、敢えて気付かないフリをしている。
いつだって良い兄貴、良い息子、学校の見本になるような生徒でいる兄貴が心配だった頃もあったけど、今は恋人の田中さんがそんな兄貴を支えているのが分かっているから安心している。
まぁ……ぶっちゃけ、兄貴が男と恋愛していると知った時は複雑な気持ちになった。
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