桐楠大附での生活

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 幼い頃から、中性的で綺麗な顔立ちをしていた兄貴は、変質者の類に何度も襲われかけていた。 中学時代、親友だと思っていた人物にまで襲われかけたりもしたから、絶対、男と恋愛なんて無理だと思っていたんだよな。(中学時代、彼女も居たし……) でも、翔さんを送迎している田中さんと出会い、兄貴は田中さんに恋をした。 まぁ……確かに、田中さんに懐いているとは思っていた。田中さんは一見遊んでいそうな百戦錬磨な雰囲気をしている超絶イケメンだが、話してみると博識で話題も豊富な人だった。 しかも家事全般をこなす程の、スーパーマンだ。 だからなのか、兄貴がぶっ倒れる度に翔さんに呼び出され、嫌な顔一つしないで兄貴の面倒を見てくれる良い人というのが俺の認識だった。  そんなある日、偶然、二人がキスしているのを目撃してしまう。(しかも、かなり熱烈な奴) 最初は田中さんに無理矢理されているのか?と思ったが、兄貴の腕が田中さんの首に回されているのを見て、「あの兄貴が、よりによって男と恋愛している!」って、頭をハンマーで殴られたような衝撃だった。 最初は受け入れられなくて、よそよそしい態度をしてしまったりもしたけど……。 「章三、もしかして……僕と田中さんの関係に気付いたのか?」 ある日、兄貴からそう聞かれた。 俺が戸惑っていると 「どう思われても、仕方ないって思っている。でも、僕は田中さんが好きなんだ。田中さんじゃないと、僕はダメなんだ」 真っ直ぐ俺を見つめ、意志の込められた瞳で言われた時、兄貴のこの眼は絶対に曲がらない時の眼だって分かっているから 「別に兄貴がそれで良いなら……良いんじゃねぇか」 って答えた。 すると兄貴は嬉しそうに微笑むと 「章三!ありがとう!」 そう言って、抱き着いて来た。 「分かったから、ベタベタすんな!」 兄貴も葵も、京子さんの影響ですぐに抱き着いて来る。 葵ならまだしも、野郎で兄貴に抱き着かれても嬉しくない。 兄貴はそんな俺に 「章三、本当にありがとう」 って、嬉しそうに微笑んだ。 二人の関係に気付いてから、兄貴が壊れるのは田中さんと何かあった時だと言うのに気が付いた。 兄貴は田中さんが傍に居ないと、食事を取ることを放棄してしまう。 それはまるで、生きる事を放棄しているようにも見えた。 そんな兄貴に献身的に尽くしている田中さんに、1度だけ 「重くないんですか?」 と聞いた事があった。 すると田中さんは笑顔で 「そういう蒼介さんを含めて、丸ごと愛していますから」 と、口の中に生クリームを突っ込まれた気分にさせられる甘い回答を返して来た。 ……なんとなく、二人が寄り添って歩く姿を見ていて、互いに思い合うってこういう事なんだろうって思った。
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