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いつしか俺は、二人みたいにお互いを支え合えるような関係に憧れた。
だからこそ、兄貴をあまり聖人君子にはして欲しくなかったんだ。
兄貴は求められると、それに応えようと無理してしまう。
その度に兄貴が倒れ、田中さんが真っ青な顔で駆け付ける姿をなるべく見たくないから。
でも、俺の願いは虚しく、兄貴は相変わらず「桐楠大附の女神」と呼ばれ崇められ、何故か翔さんは「女神の騎士」と呼ばれる謎現象になっていた。
どう見ても、あの二人に恋愛感情など無いのになぁ~。
ぼんやりと校庭で体育の授業を受けているらしい兄貴と翔さんの姿を見ていると
「という事で、風紀委員は赤地君で良いですね?」
という声が聞こえて来た。
「はぁ?」
驚いて視線を向けると、女子が一斉に
「異議な~し!」
と答える声が聞こえて来た。
呆然としている俺に
「章三がぼんやりしている間に、多数決で決まっちゃったんだよ」
こっそりと葵が呟いた。
「マジか……」
思わず呟いた俺に、女子がクスクス笑っている声が聞こえた。
俺はニヤリと笑い、ゆっくりと席を立つと
「そうか、俺が風紀委員か。という事は、うちのクラスの風紀はさぞかし良くなるだろうなぁ~。手加減しないから、そのつもりで!」
黒い笑顔を浮かべて呟いた俺に、笑っていた女子の顔が引き攣ったのが見えた。
ぶっちゃけ、嫌がらせされたら倍返しだ!のつもりで受けた風紀委員が、俺に運命の出会いって奴を引き寄せるなんて、この時の俺には思いもよらなかった。
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