出会い

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出会い

風紀委員をやらされて、俺は朝の校門チェックなるものをやらなければならなくなってしまう。 週に1回で、人数は5クラス×各学年なので1ヶ月半に1回位当番が回って来る。 8時から校門の前に立ち、違反者を摘発する訳なんだが……。 そうなると、葵と一緒に通学出来なくのが困る。 葵は見た目が可愛いので、痴漢や変質者の類に狙われやすい。 だからずっと、俺がボディーガードの役目をして来た。 そんな葵を心配していると 「え?章三に合わせて、一緒に早く行くよ」 と、笑顔で言ってくれる。 「悪いな……」 「何で?大丈夫だよ」 風紀委員になってしまい、委員会終わりも待っていてくれていた葵と会話しながら歩いていると 「え?じゃあ、その日は僕と一緒に学校に行けば良いよ」 何処から沸いて出たのか、兄貴が翔さんと一緒に現れた。 「蒼ちゃん!」 眩しい笑顔を浮かべ、葵が振り向いて兄貴に駆け寄る。 「ね、翔。あおちゃんが増えても、大丈夫だよな?」 「え!そんなの悪いよ。翔さんにも迷惑になるし」 眉を八の字にして、兄貴の提案を断る葵に 「神崎君が良ければ、俺は構わないよ」 爽やかな笑顔を浮かべて、翔さんが葵に答えた。 まぁ……翔さんとしても、葵と一緒に居られるんだから役得だよな。 俺が口をへの字にして見ていると 「こら、章三。そんな顔しない!」 そう言って、兄貴が俺の額にデコピンして来た。 「委員会なんだから、仕方ないだろう?」 兄貴の言葉に俯くと 「何、章三。俺が蒼ちゃんと一緒だから、ヤキモチ妬いてるのか?」 俺の気持ちを全く知らない葵が、そう言って無邪気に笑っている。 「そうだ」と答えたら、葵はどんな顔をするんだろうか? そして、「翔さんにも、近付いて欲しくない」と言ったら、葵はどんな反応をするんだろうか? 困るのかな? 悩むのかな? でも臆病な俺は、結局、言葉を飲み込んでしまうんだ。 「葵はどうしたい?」 そう聞くと、葵は困った表情を浮かべて俺の顔を上目遣いで見上げた。 そして俺の制服の裾を掴み 「俺は……章三と早く出るよ」 と呟いた。 多分、翔さんと二人で並んで座るのが恥ずかしいんだろうな……。 田中さんの車は兄貴が助手席に座るから、必然的に葵は後部座席の翔さんの隣になる。 「あおちゃん、遠慮しなくて良いんだよ」 翔さんの送迎車に便乗している筈の兄貴の言葉に、葵は 「でも……」 戸惑った顔で翔さんの顔を見上げた。 翔さんは優しい笑顔を葵に向けると 「神崎君さえ迷惑じゃなければ、是非一緒に行かないか?」 そう言われて、葵の頬が薄ら朱色に染まる。 「蒼ちゃんとの時間の……邪魔にならない?」 不安そうに呟く葵に、兄貴と翔さんが顔を引き攣らせる。 「なる訳無いだろう!むしろ、あおちゃんが居てくれた方が助かるよ!なぁ、翔!」 「そうだよ!いつも蒼介と田中の3人だから、神崎君が居てくれると本当に助かるよ!」 必死に食らいつく2人に、俺は冷めた視線を向ける。 何故か葵は、兄貴と翔さんが付き合っていると思い込んでいるんだよな。 どう見たって、あの二人に甘い空気なんて漂っちゃいないのに……。
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