溺愛誓約～意地悪なカレの愛し方～

Pledge 8 「幸せかどうかは自分で決めるんだ」

翌日は早朝から大掃除に精を出し、部屋中ピカピカにした。
普段は手を抜きがちなお風呂やトイレの壁、洗面台やキッチンも余すことなく磨き上げ、窓や床も隅々まで拭いた。

積み上げていた雑誌とゴミは共用の収集スペースに出し、思い切って着ていない服も処分したおかげで、随分とすっきりした。
洗い替えのシーツをピンと張ったベッドは、目にするだけでも気分がいい。

時刻は、もうすぐ十七時になるところ。
部屋の片隅に置いているキャリーケースは出番を待っているように見えて、自然と笑みが零れてしまう。

紅茶でも淹れようかと考えたとき、スマホが鳴った。
ディスプレイに表示された【今から行く】というシンプルな文面に頬が綻び、手にしたばかりのマグカップをすぐに食器棚に戻した。

綺麗になった洗面台で念入りにメイクを直して、髪もしっかりチェックして、慌ただしく身支度を整える。
そして、お気に入りのベージュのチェスターコートを羽織り、バッグとキャリーケースを持って外に出た。