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Prologue.
しん、と沈黙が下りた室内に反して、襖一枚を隔てた背中側から聞こえてくるのは楽しそうな笑い声。
すぐ近くにいるはずの人たちの声なのに、今はここだけ明らかに空気が違っていて、喧騒はもっと遠くの方から聞こえてきたのかと思えた。
耳に届いたばかりの言葉は、まだちゃんと理解できていない。
「あ、あの……もう一回言っていただいてもよろしいですか?」
だって、もし私が一瞬考えたことが間違いないのだとしたら、目の前にいるこの人の口から出たなんてどうしても信じられなくて。
酔っ払いすぎて正常な働きを放棄した耳が聞き間違えたんだ、としか思えなかったから。
(よくわかんないけど、たぶん飲みすぎだよね……。休みの前だからって、気を抜きすぎちゃった。こんなところで会うってわかってたらセーブしたのになぁ。だらしない、とか思われたかなぁ……)
そんなことを考えながらもグラスを置く気はなくて、すっかりオフモードになってしまった私が自分自身を止める術はない。
ちゃんと呂律は回っていると思うけれど、油断すれば寝てしまいそうだし、できれば今すぐにふかふかのベッドで眠らせてほしい。
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