13人が本棚に入れています
本棚に追加
「来たよー聖良ちゃん」
みみこは、腕にひと抱えもある大きなカゴを、えっちらおっちら運んできた。聖良はドアを開けて、中に招き入れてやる。
「いらっしゃい。これがリューイチくん?」
カゴの中には、真っ黒な塊がうずくまっていた。眠っているのだろうか。じっとして動く様子はない。
みみこは、カゴを静かにフローリングの床に置くと、
「お茶を淹れてきますね。待っててくださいね」
と猫に敬語で話しかけ、
「お台所はこっちかしら」
なんて言って、ひとの家のキッチンで勝手にお湯を沸かし始めた。許可も取らずに冷蔵庫を開け、牛乳を取り出してくる。
「最近はリューイチ、ロイヤルミルクティーがお気に入りでさ」
「へえ、そうなの」
聖良は頬がぴくぴくするのを止められなかった。しかし聖良が怒鳴り出す前に、みみこは、
「どーぞ」
と、聖良の前にも紅茶を置いてくれる。それからリューイチの前にも。ただし聖良にはマグカップで、リューイチにはウェッジウッドのティーカップだ。
続いてみみこは、聖良に媚びるような上目遣いを向けてきて、
「お茶うけに、クッキーとかないかしら」
「あんたねえ」
最初のコメントを投稿しよう!