「来たよー聖良ちゃん」

2/2
前へ
/16ページ
次へ
 みみこは、高校の時のクラスメイトだった。試験前になると、ノートを貸してやる間柄だが、別に友達だったわけではない。単にずうずうしいだけの同級生だ。それは今もまったく変わらない。  そして、ノートを貸しても勉強を教えても、みみこの成績はいつも変わらず、最下位だった。頭が悪いのだ。だから猫には気を使えても、人間様には使えない。  鼻先に紅茶を差し出されても、リューイチは目をくれようともしない。そこで聖良は、 「リューイチくん起きる気ないみたいね。よっぽど眠いのかな」  言ってみたが、みみこは首を振る。 「うんにゃ、あれは様子見てるだけ」  なるほど。丸まっているリューイチの耳だけがピンと立って、まるでレーダーのようにくるりくるりと動いている。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加