「けしてベッドには入れないように。彼氏さんにしっかり守ってもらってね」

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「けしてベッドには入れないように。彼氏さんにしっかり守ってもらってね」

 みみこの手紙には、所々意味不明なことが書いてある。まあ、彼は今夜いないのだから、どうでもいいことだ。 「リューイチ、もう寝るわよ」  ひと声かけて、部屋の電気を消したが、リューイチが、ベランダに面している窓の前に座り、カリカリと爪を立てて引っ掻く。どうやら開けてくれと言っているらしい。  それでも聖良が無視していると、「ギャーッ」と恐ろしい声で鳴く。 「もう、一体何なのよ!」  聖良はベッドから起きあがって、窓を細く開けてやった。リューイチはするりと隙間から抜け出して、ベランダに出て行ってしまう。リューイチのビロードの毛皮は、夜の闇に溶けて、目をこらさなければ、そこに居ることもわからなくなった。  そのまましばらく待ってみたが、リューイチがこちらに戻ってくる気配はない。聖良はいい加減待ちくたびれて、 「リューイチ、そこで何してんの」  声をかけてみるが、 「――!」  今度は声もなく、真っ白い牙と黄金に光る瞳だけを、こちらに向けられた。ちょっと怖い。
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