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「まあ話す人もいないしね」
学生特有のはぐらかし方、自虐のセンスが胸に刺さる。
言えば良かったのに。冗談でも「私も銀くんのこといいなっておもってたのに」って言えたらよかった。
流れ作業のように飲んだコップフキーノはレモン汁のように酸っぱい。場面は変わって、実家に続く帰り道。傍からみた青い傘はくたびれた花弁、その中でひっそりと泣いている学生服の私。見えてきた青空もお構いなしの雨音が私を追い込む。白雨。お天気雨。白々しい雨。
そうだ、この日から私は雨音が嫌いになったんだ。じんわりと目頭が熱くなる。
「しょうもな」
口角が上がった。この程度の失恋をこじらせてこじらせて。今よりずっと純粋だった私には辛い一日だったんだ。雨音が嫌いになるほど、忘れたいと強く願うほど。結局二人はすぐに別れて、大ニュースにもならずにどうってことない風の噂で終わったんだっけ。
あーあ、なんだか今日の憂鬱な気分の原点がこれだなんて。残りのコップフキーノを一気に煽る。すると先ほどまでの酸味はどこへやら。角砂糖を何個も溶かしたように甘かった。
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