お前のものは俺のもの

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お前のものは俺のもの

 僕…いや僕たちは、まだまだ春の暖かい風に頬を包まれながら自転車で掛けていく。  後ろに座る山際くんも上手にバランスを取りながら、僕がふらつかないようにしてくれているのが分かる。  ただ僕は前を向いているから、彼がこの時どんな表情をしていたのか、どんなことを考えていたのかは知る由もない…  それでも僕の後ろには、やっと振り向いてくれた山際くんがいる。  それだけでとにかく嬉しくて、僕の顔には自然と笑みが零れちゃっていたんだ。  ◇ ◇  少し自転車で進んだ頃、僕の後ろ側で徐に山際くんが声を上げた。 「…あっ…」 「山際くん、どうしたの?」 「まだ時間あるのか?」 「うん、この後の予定は何も無いから大丈夫だよ?」 「なら……あそこの河川敷に寄ってくれないか?」  山際くんは、僕の視界からも見て取れる近くの河川敷に寄りたいとお願いをしてきたんだ。  断る理由なんてないし、二人で話が出来るのかもしれないし、これはある意味チャンスじゃないか…!  そんな思いで、僕は迷う事もなく、山際くんのお願いを叶えてあげる事にしたんだ。  ──河川敷に着き、自転車を停め、僕たちは河川敷の草っぱらへ、そっと腰を添えた。  春風が僕の身体を包み込み、草の緑々しい香りが気持ちいい程に僕の嗅覚を幸せにさせる。  そんな僕の横には、もう背中を向けたりなんかせず、川を眺める山際くんの姿がある。  でも、でもさ…何を話したらいいんだ…?  今まであんなに声をかけ続けていたのに…ここは一つ、最初に戻ってみようか…?  ちゃんと話したこともなかったし、もしかしたらもう一度、自己紹介をした方がいいのかな?  僕は話の種になればと思い、山際くんにそっと声をかけてみたんだ。 「山際くん?」 「…なんだ?」 「僕、山下 裕翔!まぁあれだけしつこく声掛けていたから、知ってると思うけどさっ!」 「…ああ、言われなくても知ってる」  ああ…滑ったよ、これぇ…  もう…!全く話が続かないっ!  会話が続かなく、一人でモヤモヤしていたその時だった…今度はペースを全く崩さない山際くんから声が上がったんだ。 「なぁ、山下?どうしてそこまで、俺に関わろうとしてくれるんだ?」  鋭いところを突かれた質問だったけれど、隠す事でもない…だって、ちゃんとした意味を持って僕は君の背中を振り向かせたいとここまで来たんだから…  ちゃんと僕の言葉を紡ごう…  君の気持ちも僕は知りたい…  そして、君とちゃんと友達になりたい…  その一心で、僕は山際くんからの問いかけへ応えることにしたんだ。
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