お前のものは俺のもの

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「僕さ、高校に入るまでずっと一人だったんだ…そう、友達もいなくて、毎日山際くんのように空を見ていた…」 「ああ、自由になりたいな…空に浮かぶ雲のように、風の吹くままに自由に動き回りたいな…そんなことを考えていたんだ…」 「………」 「それでも僕は高校に入ってから、一人暮らしを始めて、バイトも始めて…気付いたら僕の隣に座る駿が親友になってくれて…僕はもう一人じゃない…誰かが傍にいてくれる…それだけが何より幸せだって感じるようになった…」 「そして、今年は高校生活も最後…そんな時、前の僕と同じように空を見上げて、ツンケンとしてる君が僕の前に座っていて…僕、なんでか放っておけなくなったんだよ…」 「…………」  山際くんは僕の話を川の流れを見つめながら黙々と聞いてくれているようだった。 「…ご、ごめん!!山際くんの気持ちも知らずに、勝手に分かったつもりでこんな話しちゃって…」 「…いや、間違ってなんかいない…」  えっ…山際くん、間違ってないって…  やっぱり君も僕と同じだったんだ…  僕の思いに応えるかのように…今度は山際くんが口を開き、僕に思いを紡いでくれたんだ。 「俺も今までずっと一人だったんだ…一人ならこのまま一人でいい…見て分かる通り、周りを引き寄せようとしなかった俺も悪いんだ…」 「そして、俺もお前と同じように空に浮かぶ雲のように、目の前を流れる川のように、何にも囚われることも無く、ただただ自由に…そして静かに時を過ごしたい…」 「転校しても静かに過ごそうと思っていた…別にまた、一人でもいいんだと…そんな俺の気持ちとは裏腹に後ろにいたお前が何度も何度もしつこく俺に関わろうとしてきた…すまん、最初は正直うざいと思った…」 「ご、ごめん…」 「はぁ…話しはまだ続いてるんだから、最後までちゃんと聞け…」 「う、うん…」 「周りを引き付けたくない俺は、転校早々みんなから変なやつみたいな目で見られているのは百も承知だ」 「そんな周りの声や気持ちなんかを気にもせず、お前は何度も何度も、俺に関わりを持とうとしてくれたけれど…その分、俺は怖くなった…」 「…こいつ…こんなにしてくれるのに、仲良くなれたらいいのに、仲良くなった後…俺の前からいなくなったりしないかな…」 「結局、また一人になるんじゃないのか…そんなことばかり考えては、俺は一人でいいって心に言い聞かせていた…」  山際くんの本心がどんどんと溢れ出ていく…  そうか…僕も同じだったから君の気持ちが痛いほど分かるんだ…信じていた人が離れてしまう程、切なく苦しい事を…  まだ、話は続きそうだ…  途切ったら怒られちゃいそうだし、こんなに秘めた重い思いを必死に伝えてくれているんだ。  やっと聞けた彼の声をちゃんと聴いてあげたい…僕はそっと耳を傾け続けた。 「その時だよ、そう今日のことだ…お前がくれたいちごオレ…あれ、相当大変な思いをして買ってきてくれたんだろ…?」  なんだよ、購買争奪戦争のこと知ってたんだ…と言うより、僕たちがちゃんと彼の事を見つめられていなかっただけじゃないか… 「そして、必死に買ってきて、本当なら自分で飲みたかったものを僕の大好物なんだ!って俺に差し出してくれて…俺、その時に思ったんだよ…」 「こいつなら…いや、俺…こいつと仲良くなりたい…って…」  山際くんは募る思いを伝えながら、どことなく寂しそうなのにハリネズミの髪をわしゃわしゃとさせながら照れているようにも見えたんだ。  そして、彼の本音に僕もなぜだか嬉しさのあまり、顔がポッポと火照ってしまっていた。  だって、やっと振り向いてくれた相手が今度は仲良くなりたいって言ってくれた…  僕の友達になりたいという思いが彼に届く寸前まで来ていたのだから…! 「山際くん…」 「…なんだよ…」 「僕っ…僕ね…!!」  そうだ…この時を僕はずっと待っていたんだよ…?君に伝えたかった言葉、これをやっと吐き出せる時がついにやってきたんだ。 「僕、君と友達になりたいんだっ!」
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