お前のものは俺のもの

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 とうとう僕は、彼に伝えたかった一言を、力強く届ける事が出来たんだ。  一人になんかしたくない…  僕が君の友達でありたい…  一緒に笑顔で卒業したい…  その思いでここまで来たんだもん…!  ただ、僕の気持ちに山際くんはどのような返答をくれるのだろうか…  そんな不安を抱きながらも山際くんは頬を少し赤らめながら、僕にある条件を与えてきたんだ。 「…お前の気持ちはよく分かった…俺もお前と友達になりたい…でもな…?お前が俺と友達になりたいのなら、一つだけ条件がある…」 「…う、うん…?じょ、条件…?」 「ああ………今日からお前のものは俺のもの…いいか?それが俺と友達になる条件だ」  …ん…っ?はいっ?!  君は何を仰ってるんですか…?  友達になりたい…そう思っていたけれど、山際くんが何を意図して、そんな事を僕に伝えてきたのか僕には全く分からなかったんだ。 「ね、ねぇ…ど、どういう…」 「嫌なら友達じゃなくてもいい」  はぁ…なんだよ、その条件…でもここまで来て、僕も引き下がるなんてしたくなかった。  いいよ、その条件とやら…飲んでやろうじゃないか…!  そうしたら君はもう、一人じゃないだろ…?  僕は山際くんの要望を彼からの挑戦状のように捉え、受け入れることにしたんだ。 「わ、わかったよ!さぁ、ど〜んっとこい!」 「ふふ…やっぱお前、良い奴だな…じゃあ早速…」  ゴクッ…!  ぼ、僕だって条件を飲んだとしても、どんな要望が来るかなんて分からないし、正直怖かった…  でも、それでも山際くんがこんなにも楽しそうに話してくれている事が僕は嬉しくて堪らない…それは紛れもない事実だ。 「…お前が掛けてる、その黒縁眼鏡…俺に渡してくれ」  …はっ?  えっ…ん!?こ、これ!?  なんだか、もっと酷いお願いが来るんじゃないかと構えていたのに…ぼ、僕の…め、眼鏡が欲しいの…?  僕は山際くんが何を求めているのか、やっぱり分からない…  それでも僕はそっと眼鏡に手をやり、彼に向かって外して見せた。  そして、そのまま彼に眼鏡を奪い取られてしまったんだ。 「…眼鏡外しても俺の顔、見えるか?」 「…うん、ちゃんと見えてるよ?」 「それなら良かった」とニコッと笑う彼は、僕から眼鏡を奪い取ったくせにどこか頬を赤くしている…  一体、何がなんなんだか…  そのまま山際くんは、僕から奪い取った眼鏡を自分の顔へと掛けて「おおお〜!」と満更でも無い笑みを浮かべていたんだ。 「…ねぇ、逆に僕の眼鏡なんか掛けて、ちゃんと見えてるの?」 「…ああ、お前の顔、すげぇ綺麗に見えてるよ?」 「…や、山際くん…!!」 「…ふふっ!大和でいいよ」  な、なんだよ…僕、なんでこんなにドキッとしちゃってんだよ…  し、しかも…や、大和って呼んでもいいの…?  何もかもが急に…そして綺麗に整い始めて、僕の気持ちは少し整理が必要だったのかもしれない…でも、大和と呼んでいいと言われたことが何よりも嬉しかった事は確かだ。 「…や、大和くん…?」 「同い年なんだから、くんもいらない」 「…や、大和?」 「ん?なんだ?」 「僕のことも…裕翔って呼んでくれる…?」  そうだ、僕が彼のことを名前で呼ぶなら、彼にだって僕のことを名前で呼んで欲しい。そんな僕の願いを彼はすぐに叶えてくれたんだ。 「ああ、もちろんだ…裕翔…?これからもよろしく頼むな…?」  やっぱり頬を少し赤らめる大和…  それに連られて、僕の頬まで赤くなる…  それでも僕はとにかく嬉しかった…  彼の心の中で僕は友達として存在し始めた。  それと同時に、やっと一緒にスタートラインへ立つことが出来た気がしたんだ。  僕は大和のお願いに「うん、もちろん!」と笑顔で返答し、僕たちは初めてお互いの笑顔を見せ合うことが出来た瞬間だったんだ。
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