この雨音の響く世界に

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 俺の提案に真由はクスっと笑った。真由はまだ顔を海に向けたままだった。  真由の瞳は海を映していた。それでいいと思った。  真由が俺の方を向いてくれないことで、雨音の世界に浸ったまま微笑んでくれたことで、真由が俺を雨音が作り出す非日常の世界で待っててくれているんだと、俺は確信した。 「じゃあ、まずこの雨」  真由は少しだけ俺の方へ顔を向けて呟くように問いかけてきた。 「この『アメオト』がこんなに静かなのはどういう理由があるのか一緒に考えよう」  真由の言葉に俺は絶句した。 「ん? どうしたの?」  絶句した俺に、思案の沈黙とは違うただならぬ気配を感じ真由が、視線を海から俺に移した。 「なんて?」  俺はかろうじて三文字程度の言葉を発することができた。 「だから、『アメオト』がこんなに静かな理由を考えようって」 「『アメオト』?」 「そう『アメオト』」 「『アマオト』じゃなくて?」 「『アマオト』?」 「そう『アマオト』。『雨音』と書いて『アマオト』」 「はぁ!」  真由は呆れたような怒ったような鼻息を噴射した。
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