君があまりに消えそうだから

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 それから何日も写真を撮り続けたが、やはり納得のいく写真は撮れなかった。結果、今まで撮った写真の中で彼女が「これがいい」と言った写真をコンテストに提出する運びとなった。どうやらやけに気に入っているらしいその写真を、彼女がどうしても現像してほしいと珍しくしつこく頼むので、一枚だけ現像してやることにした。いつもは現像せずにデータで保管しているせいか、現像した写真を手にした彼女はここ最近一番の笑顔で笑い、写真を胸に抱いた。  数日後、自宅に市民館の回廊にてコンテスト受賞者を貼り出すとのことの通達が届いたので、彼女と向かうことにした。この日もやはり雨が降っていたが、そう遠くない場所だったので、傘を一つだけさしていつものように手を繋いで歩いた。足音が雨音に混じるのはとても不規則で、下手くそなデュエットのようだったが、僕はずっと聞いていられると思った。  会場は冷房が効いており、同時に除湿も効いていた。パリッとした空気の中、数々の作品が壁にかけられていた。どれも素晴らしい瞬間を切り取った作品だった。暫く見ていても、僕の撮った写真は見かけなかった。そりゃあそうかと、諦めのような、はたまた安心のようなものを覚えた時。 「おおおっ、やっぱり君の作品は優秀だったんだね! 受賞してるよ! でも……おかしいな」  そこには僕の写真と名前、その下に「優秀賞」とのリボンが提げてあった。僕は受賞写真ジャンル枠を見て冷や汗を握った。彼女が不思議がるのも仕方がない。僕が受賞したのは、「風景写真」のジャンル枠。彼女が写っているなら、風景写真などというジャンルになるはずがない。彼女はしばらく立ち尽くしてから、ゆっくり僕へ振り返った。綺麗なあの長い髪の毛は、揺れなかった。 「どうして? 私が写っているのに、風景写真なんておかしいよね?」 「ごめん……」 「ごめんって、どういうこと? ちゃんと説明してよ、ねえ!」  僕はもうこれまでだと思って白状した。 「今まで沢山君の写真を撮った。でも一枚も……君は写真に写ってなかったんだ」
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