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『千裕、明日会える?』
たったそれだけの文章を打つのに、とてつもない時間がかかった気がする。
送信をタップしようとする指が震えていた。
これを触れば、もう事態は進んでしまうのだ。
後戻りは出来ない。
ゴクリと唾を飲み込む音が、樹里の中に響いた。
明日は、いつも通り会うだけ。
いつもよりもちょっとだけ、彼を観察する。
朱莉じゃないけれど、はぐらかされるわけにはいかないから。
もう時間はない。
千裕との六年が消えたっていい。
きっとそう思っていなければ、大事なことは見えないのだろう。
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