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マンションの入口を潜ると、犬の散歩に出て来た男性と出くわした。
表情は多少強張っているかも知れないが、軽く会釈をしてやり過ごそう。
どうせ知らない人だ。
今日はもう、何も考えたくないのだ。
ゆっくり風呂に入って、寝よう。
そう思った時――ワン、と吠えた犬が急にじゃれるように、樹里へ前足を持ち上げた。
思わず、キャア、と声が出る。
犬の方をよく見てなかった。
何かぶつかってしまったかもしれない。
おずおずと犬を見たが、威嚇はされていないようだ。
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