雨音に包まれて

4/7
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
翌日も雨の中、新商品の発表イベントが行われた。 今日は感傷に浸ってる暇はない。 みんなが忙しく動き回り、人手が足りなくて、バタバタしてる中に田辺くんもいた。 彼は開発に携わってきたらしく、商品知識は完璧で、しかも持ち前の明るさと人懐っこさでとで応援要員とは思えないくらい働いてくれた。 「田辺くん、そろそろお昼行ってきて」 私は、まもなく1時という頃、彼に声をかける。 すると、田辺くんはすぐに聞き返してきた。 「美弥(みや)さんは?」 自分だけ休憩することに引け目を感じてるのかな? 「私もここが終わったら行くから大丈夫よ」 私は安心させるようにそう答える。 「じゃあ、手伝います。一緒にお昼行きましょう!」 そう言うと、田辺くんは私の仕事を手伝い始めた。 30分ほどかかってようやく午後の準備を終えると、田辺くんはいつもの笑顔を見せる。 「美弥さん、お昼、何にしますか?」 他の人たちは、みんな自分で時間を見つけてそれぞれ勝手に休憩をとっている。 「のんびり食べてる暇はないから、私はコンビニ弁当でいいわ。田辺くんはゆっくり休んで来て」 私がそう言うと、田辺くんは即答する。 「じゃあ、俺もコンビニ弁当にします」 私たちは連れ立って、すぐそばにあるコンビニへ向かい、物置き場として借りている1室で並んで食べた。 「美弥さんは、何歳ですか?」 何歳に見える? 聞いてみたかったけれど、そんな合コンみたいな受け答え、いい年をして恥ずかしい。 「28よ。田辺くんは?」 私は、サラダを頬張りながら尋ねる。 「昨日、25になりました」 彼が亡くなった年だ。 一瞬、また感傷に浸りかけて、気づいた。 「昨日!? 昨日、誕生日だったの?」 聞いてない。 って、当たり前か。昨日知り合ったんだもん。 「はい。ぼっちの寂しい誕生日でしたけど」 ぼっち? 「あれ? 彼女は?」 田辺くん、背が高いイケメンさんだし、性格も良さそうなのに、彼女いないのかな? 「先月、振られました。美弥さん、慰めてくれます?」 慰めてってどういうこと? 私は引っかかったものの、そこはサラッとスルーする。 「なんで振られちゃったの?」 「他にも好きな人ができたらしいです。俺と違ってダンディな大人の上司」 ああ、それは辛い。 私たちはそんな会話をしながら、お弁当を胃袋に収めると、午後の仕事に戻る。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!