南紀高速バスの窓から

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南紀高速バスの窓から

 いつの頃からだろう。誕生日が来るのが、楽しくなくなったのは。高校生になってから。いや、高校卒業してからか。ううん、違う。やっぱ、あれかな。あれしかない。でも、認めたくないよ。  そんなことを考えながら、私は三重交通名古屋発高速バスの窓から、光り輝く海、熊野灘を眺めていた。  時計の針は昼の12時を過ぎた。車内の掲示板と運転士さんのアナウンスを聞いて、私は降りる準備を始める。荷物は背中のリュックサックと腰のポーチだけだ。そして、忘れてはならないのは、杖。  見た者の90%は熊野古道を歩くのかと間違えるだろう。残りの10%、物知りには形も長さもおかしなものと見るけど、私にとっては命より大切な杖なんだけどな。
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