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黄色い罠
今宵は新月で、曇り空。星一つない。天は私に味方した。私は誰にも見られることなく、黄色い倉庫まで疾走する。
自慢になるが、100m走は11秒ジャスト。ちなみに、アイツは10秒ジャストであった。
黄色い倉庫の入り口で、気配を消し、中の様子を探る。確かに19人の輩が酒盛りをしていた。背中に狂天狗党の刺繍、胸には天狗のデザイン画が入った黒い特効服を着こんでいる。昭和か。
一番奥にボスらしきオーラを放つ体格の良い白い特攻服の男が、スルメをつまみにガブガブと缶ビールを飲んでいた。
『こやつ、できる。』
敵の力量を瞬時に見極めるのは、当然至極。残りの18人は雑魚だが、油断はできない。
灯りは、角の柱に掛けた大きな懐中電灯が四個。足元の手ごろな石を四個だけ拾って、素早く半開きのシャッターをくぐるやいなや、懐中電灯に投げつけ、破壊する。私のコントロール、力加減は完璧である。
ほぼ同時に四個の懐中電灯の破壊音が響いて、倉庫は暗闇に包まれた。
さあ、戦闘開始と思いきや、拍手と歓声が上がる。あろうことが、倉庫の中が真昼のように明るく電灯がつくではないか。
はめられた。
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