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危険な賭け
「マジかよ。あり得ねえ〜。」
「ふつうは、はずすぞ。」
「半分はいくかもと、思ったけどよ。」
「パーフェクトはないわ。ないわ。」
どうやら、私の投石が賭けにされていたらしい。一口、一万円。誰も当たらない。胴元のボスだけ大儲けだ。
「ありがとうよ。黒頭巾ちゃん。あんたのおかげで宴が盛り上がり、俺も儲けた。一杯、奢ろうか。」
余裕綽々のボスが、この上なく憎たらしい。私の黒装束は、明るい電灯の下では超浮いてる。他のメンバーも、馬鹿にしきっている。
しかし、怒りに我を忘れるのは、愚の骨頂。そもそも、罠にハマったのは、自分が悪い。私は、深呼吸をし、早九字を切る。
「おや、悔しくて、返事ないぜ。よし、お前ら、今度はこの女の下着の色を賭けにしようぜ。さあ、はった、はった。」
一斉に盛り上がり、賭けが始まった。妄想地獄。下品、愚劣、失礼極まりない。
全員、サイコロステーキのように斬り刻み、魚のエサとして海に捨ててやりたい。戦国時代だったらよかったが、今の時代はヤバいな。
しかし、私が女であることもばれている。名古屋一番の美女であることを知らないのはかわいそうだが、一体誰が知らせたのか。あの濱田くんとは、考えにくいな。ホテルのフロントの銀縁眼鏡の線はうすいし。
まあ、よろしい。この私を罠にはめ、賭けの対象にしたお礼はたっぷりさせていただきます。その後、お聞きしましょうか。
獲物を見つけた狼のように、私の瞳が危険な光りを放った。私は、静かに笑っていた。
そんな私を恐怖で震えていると勘違いした一番近くにいたメンバー、鼻ピアスが、私の襟元に手をかけた瞬間、全身が硬直した。
私はお気に入りのプロサッカー選手をイメージしながら、股間を蹴り上げた。
あまりの激痛に声を出すことができず、苦悶の表情を浮かべ、鼻ピアスはズルズルと床に崩れ落ちた。
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