盤上の円い珠

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盤上の円い珠

「こんなものなの。つまんないなあ。もっと、私を楽しませて欲しいな。ど田舎のヤンキー気取りのクソ野郎。」  自分で言うのも何だけど、顔面偏差値に比例して、声にも自信がある。名古屋のご当地アイドルグループにスカウトされたことあるもんね。  そんな美声とは裏腹に、辛辣かつ刺激的で挑戦的な言葉にメンバーの闘争心に火がつく。残虐心に燃える。萌えた者も、少なからずいた。  ボスを除くメンバー全員が私に雄叫びを上げて、襲いかかった。私は、内心、嬉しい悲鳴をあげた。  罵声、怒号が湧き上がる中、誰も私の体には傷一つつけられない。私の心も木刀も身も、いわゆる盤上の円い珠となり、敵の動きに随って円転し、自由自在な動きをする。  頭をかち割れる者、手首を打ち砕かれる者、脛をへし折られる者、あっと言う間に全員が床に転がった。のたうち回っている。私は、汗一つかいてない。 それでも、ボスは微塵も慌てる様子もない。むしろ、私の術技の冴えを喜んでいる。  ガチで不思議だよな。 「アンタは、どうなの。私を楽しませてくれるのかしら。」 「もちろん。尾張柳生を倒すのが、死んだ爺さんの悲願である。」 何、これ。めっちゃ、楽しいやん。私はいっぺんにボスに好感、いや親近感を持った。
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