間合いは魔合い

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間合いは魔合い

 間合いは、魔合い。単なる距離ではない。心の間と動きの間。武の世界では、間合いを読み間違えると死につながる。  お互い、無形の位。動かない。いや、動けないのだ。先に動いた方が負け。後出しジャンケンに負ける馬鹿はいない。木刀で頭蓋骨陥没、手首複雑骨折、内臓破裂は嫌だよね。  お互い、目線で、気で、誘いをかけるが、乗ってこない。  私たちレベルになると、脳内で打ち合うことができる。  血と汗と涙を流し鍛え上げた術技が、ぶつかる。「表太刀」に「三学円之太刀」、「九箇之太刀」「燕飛之太刀」、いづれも相打ち。これは、ヤバい。流石だ。  三厳も内心、驚いていた。女と甘く見ていたことを反省する。こうなると、爺さん直伝の得意のあれしかないが、完全勝利とは行かないと考えていた。  私も、父上に授けらたあれしかないと思ったが、できる自信がなかった。それほど、難しい秘奥義である。  お互い、動けない。背中に冷や汗が流れ落ちる。でも、この緊張感がめっちゃ楽しい。お互い、これほどまでの好敵手に出会えたことを、喜んでいた。  そんな私たちにしびれを切らした者がいたのである。
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